WindowsとLinuxの融合環境
VMware Workstation 3.2 for Windowsを使うとWindowsとLinuxを1台のマシンで融合させた環境(Windowsデスクトップ+Windowsアプリ+Linuxアプリ+Linuxサーバ)を実現できます。
具体的には、Windows上でLinuxのXアプリを単独ウィンドウとして動作させたり、Linux用のWebサーバ,FTPサーバ,メールサーバ等をフルに活用できます。
またSambaを導入するとLinuxパーティションとNTFSパーティションの相互アクセスもできるようになります(Linux側からNTFSパーティションへの書き込みもOK)。
Windows上でLinuxのTerminal画面を単独操作しているとMac OS XでTerminalを使っているような感じがします。
またTerminal以外のさまざまなLinuxアプリもWindowsへの移植版のような感覚で使用できます。
WindowsからLinuxへの移行テストも簡単に試すことができます。
今回紹介するものはホストOSとして「Windows XP Professional」、ゲストOSとして「Red Hat Linux 7.3」という組み合わせの環境です。
Red Hat Linux 7.3を使用したのはRed Hat Linux 8.0より安定していると考えられるためです。
1.マシン環境
- CPU:Pentium 4 1.7GHz
- メモリ:640MB
- VGAカード:GeForce3
- モニタ:最大解像度=1920x1440
- サウンドカード:SoundBlaster Live! Value
- SCSIコントローラ:Advansys SCSI Host Adapter
- Windows XPのファイルシステム:NTFS
- Red Hat 7.3のインストール先:SCSI HDD
2.VMware for WindowsとSambaの導入
Windows XPへのVMware for Windowsの導入及びLinuxへのSambaの導入はこちらを参考にして下さい。
3.Linuxサーバの活用
(1)Webサーバ(Apache)
Linuxユーザのホームディレクトリにpublic_htmlディレクトリを作成すればユーザ別のホームページが使用できます。
(2)FTPサーバ(vsftpd)
(3)SSHサーバ
SSHクライアントを使用するとrootによるリモートログインが使用できます。
(4)メールサーバ
sendmail,POP3サーバを使ってメールの仕組みなどを勉強できます。
(Netscapeメールでrootへの受信メール閲覧)
(5)Webmin/Usermin
Red Hat 7.3にはWebmin/Userminは付属していません。
今回は次のファイルでWebmin/Userminを導入しました。
Net_SSLeay.pm-1.21.tar.gz
webmin-1.030.tar.gz
usermin-0.970.tar.gz
Webminサーバはntsysv等でシステムブート時に自動起動する設定をしておきます。
尚、Userminサーバの起動スクリプトはusermin-0.970.tar.gzを展開した中にあるusermin-initというファイルです。
適当なディレクトリにuserminという名称でコピーして「usermin start」で起動できます。
Webminはhttps://マシン名:10000/で呼び出します。
またUserminはhttps://マシン名:20000/で呼び出します。
Webmin/Usermin共にLanguageの設定変更で日本語表示にすることができます。
Webminの画面例
(6)Oracleサーバ
VMware環境下のLinux上でOracleサーバを起動し、Windows上のOracle9i クライアント(JavaベースのSQL*Plus Worksheet)からOracleデータベースをアクセスしてみました。
こちらはOpenOffice.org1.0.1でOracle JDBCを利用した例です。
フォントの代替を行っていない状態なのでメニュー等の日本語が一部表示されません。
またWindows上でLinux用WINGZ/DataLinkからOracleアクセスも行ってみました。
更に、Red Hat 7.3環境にOracleオープンソースODBCドライバを導入して利用してみました(詳細はこちらです)。
(7)PostgreSQLサーバ
こちらではWindowsクライアントからPostgreSQLサーバへのODBC/JDBC接続例含めて紹介しています。
(8)MySQLサーバ
こちらではWindowsクライアントからMySQLサーバへのODBC/JDBC接続例含めて紹介しています。
(9)VNCサーバ
Red Hat 7.3にはVNCが標準で組み込まれています。
Red Hat側でVNCサーバを起動し、Windows側のVNCビューアでRed Hatのデスクトップを表示・操作してみました。
尚、VNCサーバは現在のセッションとは別のリモート用セッションをVNCビューアに提供するため実際のRed Hatデスクトップ画面とVNCビューア側の画面は同じものにはなりません。
(10)Desktop On-Call (Ver 5)
Desktop On-Callを使用するとVNCとは異なりRedHat 7.3側のデスクトップ画面をそのままクライアント側のブラウザに表示させてリモート操作することができます。
実寸画像はこちらです(1920x1440)。
上記の実寸画像のWindowsデスクトップに表示している画面は次の通りです。
- 左上
VMware下でのRedHatデスクトップです。
Desktop On-Call(PCリモコン)とVNCサーバを起動したところです。
RealPlayer 8 Basicも起動しています。
- 右上
Netscape CommunicatorからDesktop On-Callを呼び出してRedHatをリモートコントロールしている画面です。
- 左下
- Xサーバのマルチウィンドウ機能でRedHatのシステム情報を表示しているところです(guname)。
- RealOne Player
- WindowsエクスプローラでRedHatのSambaサーバをアクセスしています。
- RedHat 7.3に導入したメーリングリスト管理ソフト(fml)に送付したhelpコマンドの応答メールの表示。
- 右下
VMware下でPlan9を動作させています。
Plan9のVNCビューアでRedHatをリモート操作しています。
4.Linuxアプリの活用
Windows版のXサーバを使用するとWindowsデスクトップ上でLinuxアプリを単独ウィンドウとして操作できるようになります。
5.WindowsとLinuxでのプリンタポート共有
WindowsのパラレルポートLPT1はVMware環境のLinuxで/dev/lp0として使用できます。
Linux動作時にそのポートをWindows側で使用する場合はVMwareの[デバイス]-[パラレル→LPT1]-[切断]を実行すればOKです。
6.GIMPでのスキャナ利用
EPSON GT-9700Fスキャナにも対応したスキャナドライバ(iscan 1.4.0:Image Scan! for Linux 1.4.0)を導入しUSB接続のスキャナをGIMPで利用してみました。
- VMware内でのRed Hatのブート
- Red Hatへのスキャナドライバのインストール
- GIMPへのiscanプラグインの登録
ln -s /usr/bin/iscan ~/.gimp-1.2/plugin-insでiscanをGIMPのプラグインとして登録します。
- ゲストOSへのUSBポート接続先切り替え
Windows側に接続されたUSBポートをゲストOSのRed Hatに接続するためには、VMwareの[デバイス]-[USBポート1(接続なし)]-[Seiko Epson USB device]を選択します。
- Windows上からRed HatのGIMPを起動します。
- GIMPの[拡張]-[Acquire Image]-[Scanning(iscan)]を起動します。
ここでiscanの操作画面がWindows上に出てきますのでスキャナが使えます。
Linux関連の本の表紙をスキャナでプレビューしてGIMPに取り込んだところの様子はこちらです。
- USBポートの接続先の戻し
ゲストOSで使用したUSBポートをWindows側に接続し直すにはVMwareの[デバイス]-[USBポート1 -> Seiko Epson USB device]-[切断]を選択します。
7.Kookaでのスキャナ利用とOCR(GOCR)
Red Hat 7.3にはKDEのKookaというスキャナソフトが付属しています。
操作手順は次の通りです。
- KDEメニューのグラフィックスから「Kooka(スキャン&OCRプログラム)」を選択
- 「Kookaへようこそ」画面でスキャナ装置を選択
- 「Kookaスキャニング」画面でScan mode等の設定
- <プレビュースキャン>ボタンでプレビュー表示
- <最終スキャン>ボタンでスキャン完了後「Kooka保存アシスタント」で保存用の画像形式(bmp等)を選択
- 最終スキャン結果
実寸画像はこちらです。
- 最終スキャン結果の画像ファイルは~/.kde/share/apps/ScanImages/kscan_0001.bmp等の連番付きファイル名で保存されます。
Red Hat 7.3にGOCRという光学式文字認識ソフトを組み込むとKookaで読み込んだ画像の中の文字をテキストファイルとして保存できます。
GOCRはhttp://jocr.sourceforge.netからダウンロードできます(URL中のjocrはgocrの間違いではなくsourceforgeの中には既にgocrがあるためjocrになっています)。
今回使用したのはgocr-0.37-2.i386.rpmというバイナリパッケージです。
KookaとGOCRの連動操作は次の通りです。
- Kookaでスキャンします
- スキャンした結果が表示される画像キャンバス内で文字認識させたい部分を矩形選択します
- Kookaの[画像キャンバス]−[選択範囲をOCR]の実行
- <OCR開始>ボタンで読み取り結果が表示されます。
- <Kateで開く>ボタンで認識結果をテキストファイルとして開くことができます。
尚、認識結果のテキストは/tmp/kde-ユーザ名/kookaxxxxx.txtファイルとして保存されています。
8.StarSuite 6.0の活用
Linux用のOpenOffice.org 1.0.1を単独で導入して使用するにはフォント、安定性等の面で種々の問題があるようです。
そこでそれらの問題を回避する意味でStarSuite 6.0を導入してみました。
- StarSuiteの導入
StarSuiteは5ユーザライセンスであり、ネットワークインストールとワークステーションインストールができます。
またStarSuite導入後にStarSuite付属のADABAS Dを追加インストールすることもできます。
ADABAS Dをインストールすると.bashrcにDBROOT,DBWORK,DBCONFIG等の環境変数が自動追加されます。
- StarSuiteのメニュー
StarSuiteをインストールすると「お気に入り」にStarSuiteのメニューが登録されます。
- Writerによるpdfファイルの作成
- Writerで作成した文書
上段の文字のフォントはHG Mincho Light Jです。
中段の画像はSylpheedメーラのロゴ(png形式)です。
下段の文字のフォントはKochi Gothicです。
- pdfファイルの作成
StarSuiteできれいなpdfファイルを作成するには[お気に入り]-[StarSuite 6.0]-[情報とセットアップ]-[StarSuite 6.0 プリンタの管理]でAdobe Distillerドライバをpdfコンバータとしたプリンタを追加しておきます。
StarSuiteで作成した文書を[ファイル]-[印刷]においてAdobe Distillerドライバプリンタで印刷実行するとpdfファイルが得られます。
- Writerで作成したpdfファイルのXpdfによる表示
- Linux版Acrobat Reader 5.0.6による表示
- Windows版Acrobat Reader 5.0による表示
pdfファイルに含まれるフォントで表示されます。
- StarSuiteでのOracleアクセス
StarSuiteのブラウザ機能でもOracle JDBCアプレットを使えます。
9.WindowsアプリとLinuxアプリの混在デスクトップ
Windowsデスクトップ上で以下のアプリを同時に動作させてみました。
- Windowsアプリ
- Photoshop:Linux側の画像をSamba経由で開いて表示しています。
- SQL*Plus Worksheet:Linux側のOracleサーバをアクセスしています。
- AL-Mail32:Linuxのメールサーバを使用しています。
- Windowsエクスプローラ:Linuxファイルシステム内画像のサムネイル表示をしています。
- Linuxアプリ
- grip:音楽CDのリッピングツール
- gnome-terminal:Linuxの端末エミュレータ
- xosview:Linuxのリソース使用状況モニターツール
- hwbrowser:ハードウェアブラウザ
- GIMP:NTFSのWindows共有ディレクトリ内の画像を表示しています。
- Nautilus:NTFSのWindows共有ディレクトリを表示しています。
- gedit:Photoshop付属のreadme.txtを表示しています。
実寸画像はこちらです(1600x1200)。
またLinuxアプリのボタンやスクロールバー等のGUI部品の外観をAqua風にカスタマイズしたデスクトップ画像はこちらです。
更にWindowsデスクトップにMac OS Xライクなドックを付けてRed Hat起動用アイコンを登録してみました(ドック付きWindowsデスクトップでのLinuxアプリ)。
ちなみに少しAquaっぽくしたRealOne Playerの外観はこちらです。
10.Services for UNIXx環境でのLinux連携
Windows XP側にSFU(Services for UNIX)を導入するとWindows XPをNFSクライアントやNFSサーバにすることができます。
今回使用したSFUはVer 3.0です。
- NFSクライアント
Lunux側で/etc/exportsに/home/amberを指定してあるとします。
SFUを導入した環境でのコマンドプロンプトから次のコマンドを実行するとLinux側の/home/amberがWindows側のEドライブにマウントできます。
mount \\pc_u10\home\amber\ e:
- Interix
SFU 3.0にはInterixというUNIX実行環境が付属しています。
ここではCシェルの利用例を示します。
- 「スタート」メニューから「C Shell」を起動
- UNIXコマンドの利用
C Shellでは様々なUNIXコマンドが使用できます。
- SFU付属Xアプリの利用
SFUにはいくつかのXアプリが付属していますがXサーバ自体は付属していません。
そこで今回はLinuxをXサーバとして使ってみました。
SFU付属のXアプリをLinux側に表示するにはInterixのC Shell上で「setenv DISPLAY pc_u10:0.0」というような環境変数設定が必要です。