Citrix XenDesktop 2.0の環境

米国XenSource社を買収した米国Citrix Systems社は2007年10月22日にデスクトップ仮想化製品として以下の製品をリリースすることを発表しました。
(1)Citrix XenServer
これはXenベースの仮想化インフラソフトで、XenCenter(Windows版)から基本的な管理・運用が行えます。
(2)Citrix XenDesktop
Citrix XenDesktopは、そのCitrix社が以前からりリリースしていた「Citrix Desktop Server 1.0」の後継でXenServerとの連携機能を組み込んだものです。
このため「Citrix XenDesktop」という新名称にはなていますがそのバージョンは2.0の「Citrix XenDesktop 2.0」となります。

XenDesktop 2.0は一口で言うと、「仮想マシン環境で動作するWindowsデスクトップを別マシンからリモート操作する」ことを実現するソフトです。
下記はその補足です。
(a)仮想マシン環境は、XenServerだけではなくVMware Infrastructure 3などもサポートされています。
(b)その仮想マシン環境で動作するWindowsデスクトップを「仮想デスクトップ」と呼びます。
(c)仮想デスクトップにはCitrix Desktop Service(仮想デスクトップエージェント)をインストールしておく必要があります。
(d)一つの仮想デスクトップから複数の仮想デスクトップを瞬時に作成できます(マルチ仮想デスクトップの実現)。
この場合、元になる仮想デスクトップOSの仮想ディスクをコピーした仮想ディスクを複数人で共有します。
共有仮想ディスクの利用者がその仮想ディスクに変更を加えてもシャットダウンするとその変更内容は消えてしまいます。
(e)XenDesktopでの仮想デスクトップはアクセス管理コンソールという管理ツールで集中管理されます。
アクセス管理コンソールで仮想マシンのシャットダウン・再起動も行えます。
また業務スケジュールに合わせて事前に仮想マシンを所定の数だけ立ち上げておくこともできます。
(f)システム管理者が元になる仮想ディスクに更新を加えて(例:Windows Updateの実施や共通アプリのバージョンアップ)、
再度そのコピー(共有仮想ディスク)を用意しておくと利用者は何もしなくてもその最新仮想ディスクを利用できます。
(g)仮想デスクトップの操作は仮想デスクトップ接続専用クライアントソフトを使用します(高速ICAプロトコルを使用したICAクライアント)。
このICAクライアントとしては、Windows用、UNIX/Linux用、Mac OS X用があります。
もちろんRDPで接続して使用することもできます(RDPプロトコル使用)。
(h)利用者ごとに個別のアプリを使用したい場合はXenAppを使用して一時的にその個別アプリを使用することが可能となります(XenAppのプロファイラ例)。
※XenAppは「Citrix Presentation Server」(その前はMetaframe Presentation Server)の新名です。
(i)XenDesktopでは以下の3個のWindows Server 2003が必要となります。
・ドメインコントローラ(Active Directory)用Windows Server 2003[ドメインコントローラと略します]
・デスクトップ配布コントロールサービスとアクセス管理コンソールを実行するWindows Server 2003[DDCサーバと略します]
・仮想ディスクを管理するプロビジョニングサーバ用Windows Server 2003[PROVサーバと略します]
(j)仮想デスクトップの仮想マシンもドメインコントローラで管理させる必要があります。
(k)Microsoft社はCitrixとの連携によって仮想マシン環境で動作するWindows製品の価格を下げるようです。
(但し、ICAクライアントがWindows版以外の場合は不明)
(l)実環境で動作してるデスクトップもICAクライアントから接続操作できます。

ここではXenServerの仮想マシンにインストールしたWindows XP仮想デスクトップを基にマルチ仮想デスクトップを作成する流れを中心に紹介します。
(今回使用するWindows XPはWindowsドメインに参加できるWindows XP Professionalを指しています)


1.全体のおおまかな流れ

マルチ仮想デスクトップの作成手順は少し煩雑に感じる面もあります。
そこでまず全体のおおまかな流れを紹介します。


2.ドメインコントローラの作成

XenDesktopではWindowsドメインの利用が必須であり以下のWindows Server 2003環境とします。
XenDesktopで使用するWindowsマシンは仮想マシン含めてすべてこのドメインコントローラに管理させます。

3.DDCサーバの作成

DDCサーバは仮想デスクトップを公開するサーバであり、IISも導入したWindows Server 2003環境とします。

4.XenServer環境の構築とXenCenterの準備

ここではXenServer環境の構築とXenCenterの準備を行います。



5.XenCenterによるXenServerへのWindows XPのインストール

ここではXenCenterを使用してXenServer環境にWindows XPを導入します。


6.DDCサーバによるそのWindows XPの公開

ここではDDCサーバにインストールしたAccess管理コンソールを使用して仮想デスクトップ(Windows XP)を公開します。
Access管理コンソールでの公開手順は以下の通りです。



7.公開されたWindows XPへのICAクライアントからの接続確認

クライアントマシンにICAクライアントソフトを導入して、公開された仮想デスクトップ(Windows XP)に接続します。



8.ディスクレス仮想マシンテンプレートの定義

マルチ仮想デスクトップを構築するためにはディスク定義のない仮想マシンテンプレートを事前に用意しておきます。
この仮想マシンテンプレートと、後述する共有仮想ディスクをペアにして仮想デスクトップを定義します。

ディスクレス仮想マシンテンプレートはXenCenterで仮想マシンを定義してから、テンプレートに変換するだけで作成できます。
今回作成したテンプレート内容は以下の通りです。
(1)Template:Other install media
(2)Name:xentestxp-multi template(仮想マシン名)
(3)Description:XP Template for Multiple Virtual Desktop
(4)Home Server:xenserver41選択
(5)Number of vCPUs:1
(6)initial memory:384MB
(7)Virtual Disks:指定しません。
(8)Virtual Interfaces:デフォルトのままです。
(9)[Start VM automatically]オプションは無効にします。
(10)xentestxp-multi-templateの右クリックメニューで[Convert to Template]を選択して仮想マシン定義をテンプレートに変換します。


9.PROVサーバの作成

PROVサーバはディスクレス仮想マシンテンプレートと仮想ディスクを組み合わせて仮想デスクトップを構築するサーバです(Windows Server 2003環境)。



10.共有仮想ディスクの構築



11.PROVサーバによるWindows XPのマルチ仮想デスクトップ化(自動公開)

ここでは最終段階である実際のマルチ仮想デスクトップ化を実施します。



12.マルチ仮想デスクトップへのICAクライアントからの接続確認

上記で作成したマルチ仮想デスクトップにICAクライアントから接続確認してみました。


13.マルチ仮想デスクトップでのストリーム配信利用

Citrix XenApp(旧Citrix Presentation Server) 4.5のEnterprise Edition以上を導入するとアプリケーションのストリーム配信機能が利用できます。
マルチ仮想デスクトップでストリーム配信を利用する手順はこちらのXenApp環境で紹介しています(本ページの続編扱いです)。


14.Linux上でのXenCenter 4.1

XenCenter 4.1は.NET Framework 2.0以上搭載のWindows環境(XP,Vista,2003)が動作条件になっています。
CentOS 5のGUI環境を導入したXenServer 4.1上のWine環境でそのXenCenterが動作すると大変助かります。
そこでその予備検証としてUbuntu 8.04 + Wine + .NET Framework 2.0環境を準備してXenCenter 4.1を導入してみました。
結果的にはXenCenterを起動してヘルプを表示したりXenServerへの接続ダイアログは出せるのですがXenServerへの接続処理でダンマリ状態になりました。
このためLinux上でのXenCenter利用は途中で中止しました。

以下はUbuntu 8.04への「Wine + .NET Framework 2.0 + XenCenter 4.1」環境の構築手順とXenCenterの動作検証結果です。