WindowsデスクトップPCでのMiracast利用例

Miracastは簡単に言うと「1対1のWi-Fiダイレクトを利用してデバイスに画面伝送を行う技術」です。
画面データを受け取る側のデバイスを「Miracastレシーバ」と言います。
Windows 10/11ではMiracast機能が標準装備されていて、PC画面をMiracastレシーバに伝送したり、そのPC自体をMiracastレシーバとして機能させることもできます。
Miracastレシーバ機能を備えたTVもあるかと思いますが、通常のTVやプロジェクタにMiracastレシーバをHDMI接続すればPC画面をTVやプロジェクタに表示させることが可能となります。
筆者がWindows環境でMiracast機能を使用して感じた利点の一つは画面伝送先ディスプレイをワイヤレスのサブディスプレイとして利用できることです。
(ワイヤードメインディスプレイとワイヤレスサブディスプレイの同時利用ということです)

ここでは、Windows 11のデスクトップPCの画面をMiracastレシーバに伝送してワイヤレスマルチディスプレイ環境の構築等についてご紹介致します。

  1. Miracast利用環境

  2. Miracastレシーバに対するアクセスポイント設定について
    Miracastレシーバに対するアクセスポイント設定はMiracastレシーバのファームウェアの更新のために必要とされます。
    しかしMiracastレシーバ(ELECOM LDT-MRC03)のファームウェアの更新は出荷後もないようですのでMiracastレシーバに対するアクセスポイント設定は不要です。

  3. PC側Wi-Fi設定について
    結局は内蔵または外付けWi-Fi子機についてはMiracast接続のための特別な設定は不要ということになります。

  4. PC側でMiracast利用のための設定変更について
    PC側に無線LANアダプタ(Wi-Fiアダプタ)が接続されていればその無線LANアダプタ(Wi-Fiアダプタ)の設定変更はしないままでMiracastが利用できます。

  5. Miracast利用手順
    PC画面を単純にTVに伝送する手順は以下の通りです。

  6. Windows Media PlayerによるMiracastレシーバ接続例
    Windows Media Playerは「ストリーム」メニューでの設定によってDLNAメディア対応機能(DLNAメディアサーバ/レシーバ/プレーヤ)を使用できるようになります。
    しかし、「ストリーム」メニューでのデフォルト設定のままでMiracastレシーバ接続ができるようになっています。
    【Windows Media PlayerによるMiracastレシーバへの接続操作例】
    (1)Windows Media Player内のメディア(動画)の右クリックメニューの[デバイスキャスト]で「TV/ディスプレイ」アイコンの付いたMiracastレシーバが表示されます。

    (2)接続したいMiracastレシーバを選択するとそのMiracastレシーバに接続されて、メイン画面での再生が開始されます。
    ※ Windows Media Playerでの再生中ウィンドウをサブディスプレイに簡単に移動させたい場合はShift+Windows+[→]キーを押します。

  7. ファイルエクスプローラによるMiracastレシーバ接続例
    Windows Media Player以外にファイルエクスプローラでもMiracastレシーバ接続が可能になっています。
    【ファイルエクスプローラによるMiracastレシーバへの接続操作例】
    (1)ファイルエクスプローラでのメディア(動画)の右クリックメニューの[デバイスキャスト]で「TV/ディスプレイ」アイコンの付いたMiracastレシーバも表示されます。

    (2)接続したいMiracastレシーバを選択するとそのMiracastレシーバに接続されて、メイン画面でのWindows Media Playerでの再生が開始されます(再生中画面例)。

  8. WindowsのMiracast機能とiPhone用画面ミラーリングアプリとの連携例
    iPhone用のアプリとして「Miracast」というアプリがありますが、名前とはうらはらにMiracastレシーバ(MRC03-xxxx)を認識しません
    実は、iPhone用の「Miracast」アプリはChromecast対応のアプリなのですが、Chromecast Ultraを認識しませんでした(他のアプリではChromecast Ultraは認識されますが...)。
    そこで今回使用したのはApowerMirrorアプリです。
    多機能型の「ApowerMirror」アプリにはマルチディスプレイのメインとサブを選択してミラーリングする機能(ディスプレイ切替機能)が備わっています。
    「ApowerMirror」アプリのディスプレイ切替機能を使用してWindowsのMiracast機能でのマルチディスプレイのメインとサブを切り替えてTV表示してみました。
    Miracast機能を使用するPC(Windows 11)とiPhone及びTV側全てにApowerMirrorをインストールし、PC→iPhone→TVというネストミラーリングを使用しました。

  9. PC側をMiracastレシーバにする方法
    Windows 11のPCをMiracastレシーバにするには、[設定]−[アプリ]−[オプション機能]で「ワイヤレスディスプレイ」をインストールする必要があります。
    すべてのアプリに登録された「ワイヤレスディスプレイ」を起動して「xxxにワイヤレス接続する準備ができました。」という表示がされるとMiracastレシーバとしての待機状態になるはずです。
    尚、PC側に無線LANアダプタが接続されていない場合は「ワイヤレスディスプレイ」の起動でMiracast未サポートの旨のエラーとなります。

  10. ELECOM LDT-MRC03でのAirPlay対応について
    今回試用しているMiracastレシーバ(ELECOM LDT-MRC03)はiPhone/AirPlay対応という扱いにはなっていません。
    しかし、このMiracastレシーバはAirPlayレシーバとしても機能するようです。
    iPhone側のWi-Fiは普段お使いのSSIDへの接続のままで、MiracastレシーバをAirPlayレシーバとして使用することが可能です。
    (但し、Miracastレシーバでの設定でiPhoneと同じSSIDへの接続設定は必須です)
    実際、iPhoneの「写真」アプリの画像・動画に対する[共用]−[AirPlay]でのデバイス一覧に「MRC03-xxxx」というデバイスが表示されます。
    その「MRC03-xxxx」を選択するとMiracastレシーバ側で画像・動画が再生されます。
    更に、iPhoneのコントロールセンタの「画面ミラーリング」画面でも「MRC03-xxxx」を選択するとiPhone画面がMiracastレシーバ側にミラーリングされます。

  11. ELECOM LDT-MRC03でのDLNA対応について
    今回試用しているMiracastレシーバ(ELECOM LDT-MRC03)はDLNA対応という扱いにもなっていません。
    しかし、このMiracastレシーバはDLNAメディアレシーバとしても機能するようです。
    iPhoneのアプリからこのMiracastレシーバをDLNAメディアレシーバとして使用してみました。
    AirPlayの場合と同様にiPhone側のWi-Fiは普段お使いのSSIDへの接続のままで、MiracastレシーバをDLNAメディアレシーバとして使用することが可能です。
    (但し、Miracastレシーバでの設定でiPhoneと同じSSIDへの接続設定は必須です)
    例えば、iPhoneの「TV Cast(D)」アプリでキャスト先として「MRC03-xxxx」を選択して接続すると「TV Cast(D)」アプリのロゴ画面がMiracastレシーバ側に待機表示されます(勿論、画像・動画再生も問題ありません)。
    更に、「Nero Streaming Player」アプリでも再生先デバイスとして「MRC03-xxxx」を選択することで画像・動画をMiracastレシーバ側で表示・再生できます(動画再生例)。

  12. 2つのiPhone画面のTV同時表示例
    プレゼンを行う場合に2つのiPhone画面をTV/プロジェクタに並べて表示させたいこともあるかと思います。
    ここではiPhone 8とiPhone 12の画面を並べて表示する3つの方法(パターン)について簡単に紹介します。

  13. Hyper-V仮想マシンのAndroid-x86からのMiracastレシーバ利用例
    Android-x86は、実機マシンはもとよりいろいろな仮想マシン環境で実行可能になっています。
    仮想マシン環境でのAndroid-x86は実機環境のAndroid-x86よりも制約は多いようですが今回はWindows 11のHyper-V仮想マシンとして実行させてみました。
    Android-x86をWindows 11のHyper-V仮想マシンで実行させる目的はHyper-V仮想マシン環境のAndroid-x86がMiracastレシーバを利用できることの簡単な検証です。
    結論から言うと、Hyper-V仮想マシン環境のAndroid-x86のYouTubeアプリの動画をMiracastレシーバに音声含めて伝送できることが確認できました。
    尚、Android-x86には仮想Wi-Fi機能があり、Android-x86を実行するPC/仮想PC自体がパスワードなしのWi-Fiスポットになり、Android-x86のLANは自動的にWi-Fiネットワークとなります(SSID:VirtWifi)。
    検証の環境及び手順は以下の通りです。
    【補足】
    (1)仮想Wi-Fi接続時のコンソール画面(Alt+F1)でifconfigを実行するとwifi_ethとwlan0が表示されます。
    (2)Chromecast Ultraもキャストデバイスとして認識されます。


    YouTubeのキャストアイコンをクリックして「キャスト先」画面で[Chromecast Ultra]を選択するとChromecast Ultra側で音声含めた映像が再生されます。
    その場合のYouTubeアプリには「Chromecast Ultraで再生しています」というメッセージが表示されます。

  14. ELECOM LDT-MRC03以外のMiracastレシーバについて(その1:MiraScreen編)
    ELECOM LDT-MRC03以外のMiracastレシーバとして「MiraScreen」を試してみました。
    「MiraScreen」本体は直径6cm程の円形ドングルで本体中央には「EZ」を文字ったロゴが入っています。
    「MiraScreen」にはAirPlayモード(デフォルト)とMiracastモードの二つのモードがサポートされており、本体付属の切り替えスイッチでモード切り替えができるようになっています。
    (オープニング画面はモードによって異なります)
    デバイス名は「Mirascreen xxxx」という名称になります。
    AirPlayモードはiOS系デバイス対応でAirPlayレシーバとしてだけでなくDLNAメディアレシーバとしても動作します(iPhoneの「TV Cast(D)」アプリでのDLNAメディアレシーバとしての検出例)。
    MiracastモードはAndroid系デバイスとWindows対応になっています。
    Miracastモードでは上記でご紹介したELECOM LDT-MRC03と同様のMiracastレシーバとしてWindowsから利用できました。
    更に無線LANアダプタをWI-U2-433DMS/Nにした場合の動作確認も下記の流れでWindowsからの利用を試してみました(特に問題はありませんでした)。

    【補足】
    (1)「MiraScreen」はMiracastモードにしてもAndroid-x86の仮想マシンからはキャスト先デバイスとして検出されませんでした。

  15. ELECOM LDT-MRC03以外のMiracastレシーバについて(その2:P3Q-00009編)
    Microsoftがリリースしている主流のMiracast対応デバイスとしては次の2種類あります。
    ・Microsoft ワイヤレスディスプレイアダプタ(モデル番号:P3Q-00009)
    ・Microsoft 4K ワイヤレスディスプレイアダプタ(モデル番号:UTH-00036)
    筆者は、以前Windows 10のタブレットPCと24インチ液晶モニターをHDMIケーブルで直結したデュアルディスプレイ環境を使用していました。
    そこで、今回はその24インチ液晶モニターをWindows 11のデスクトップPCからP3Q-00009経由でワイヤレスディスプレイとして使用してみました(デスクトップPCからP3Q-00009へのMiracast接続)。
    ELECOMのMiracastレシーバ(ELECOM LDT-MRC03)を使用する場合と同様の方法でP3Q-00009を経由して接続利用できました。
    尚、P3Q-00009の待機画面における壁紙の設定等はELECOMのMiracastレシーバ(ELECOM LDT-MRC03)でのWebインタフェースとは違って、Microsoft Storeにある「ワイヤレスディスプレイアダプタ」アプリ(後述)で行います。
    今回試した操作の流れは以下の通りです。

  16. PC間Miracast接続[→失敗]
    Windows10/11にはワイヤレスプロジェクション機能があります。
    今回、Windows 10 タブレットPCからWindows 11 デスクトップPCへのワイヤレスプロジェクション用Miracast接続を試してみました。
    (Windows 11 デスクトップPCをMiracastによるミラーリングのレシーバにします)
    結果的には、接続不可となりましたが、ここではその操作方法を一応紹介させて戴きます。