Nautilus 1.0
2001年3月12日にNautilus(ノーティラス:GNOME対応のファイルマネジャ兼Webブラウザ)のVer 1.0が正式リリースされました。
Nautilusというのはオウムガイという意味です。
Nautilusのインストールではammnonite(アンモナイト)というRPMパッケージもインストールされます。
どうやらShell=貝というものにかなりこだわっている感じがします。
Nautilusの開発思想はUNIX互換シェルにおけるユーザインタフェースを徹底的にGUIベースのもの(つまりビジュアルシェル/グラフィカルシェル)にして「デスクトップユーザのための大幅な操作性向上」をねらっているようです。
さてNautilusは従来の「Midnight Commander」(GNOME標準のファイルマネジャ)に比べてかなり機能が豊富になっています。
またNautilus自体の画面再描画の動きを見ているとMozillaでのそれに非常によく似た感じがします。
Mozillaのコンポーネントを取り込んでMozillaベースの次世代ファイルマネジャに仕上げたという印象を受けました。
今回はこのNautilus 1.0をRed Hat Linux Release 7.0.90ベータ版上で使ってみましたので少し紹介します。
(日本語モードでの使用例については最後の方でまとめて紹介しています)
(1)Nautilusの特徴
- マルチプラットフォーム対応
今回リリースされたNautilusはLinux対応版ですが商用UNIXのSolaris等にも対応予定です(Solaris版GNOME対応)。
- 多言語対応
LANG環境変数の切り替えだけで英語版にも日本語版にもなります。
- Mozillaコンポーネントの採用
Mozillaコンポーネントの採用によりサイドバー、テーマといったMozillaライクな機能をサポートしています。
- ファイルマネジャ兼Webブラウザ
KDEのKFMやKonquerorと同様にファイルマネジャの機能にWebブラウザとしての機能も備わっています(もちろんFTPクライアント機能も内蔵しています)。
- デスクトップ統合
NautilusはGNOME上にNautilusデスクトップを実現します。
Nautilusデスクトップ固有のデスクトップアイコンや独自の右クリックメニューをサポートしています。
右クリックメニューでFloppyやCD-ROMのマウント/アンマウントが簡単に行えます(但し Ver1.0ではCD-ROMのEject機能はありません)。
- Nautilusアップデート(自動更新)
Nautilusの初回起動時には「Nautilus 初期設定」ウィザードが出てきます。
その中のオプション指定によりNautilus自身の自動アップデートをさせることができます。
- 「Windowsエクスプローラ」ライクな操作性
Windowsエクスプローラのようなドラッグ&ドロップ操作をベースにしています。
(他のアプリケーションへのドラッグ&ドロップも同様にサポートしています)
またWindowsエクスプローラでの次のような機能に相当するものもNaitilusに組み込まれています。
- シンプル操作
WindowsエクスプローラとMozillaをミックスさせたような使い心地でかつドラッグ&ドロップベースのシンプルな操作仕様になっています。
WindowsユーザはもちろんのことLinuxを始めたばかりの方にも違和感なく使えると思います。
- 「フォルダ」用語の採用
Nautilsでは従来のディレクトリという用語と「フォルダ」という用語を併用するようになりました。
NautilusのユーザマニュアルではFolderという表現が使われています(Windows側でマニュアルをみたところ)。
- ユニークな機能群
- スタイリッシュアイコン
ファイルタイプに応じたアイコンはとてもスタイリッシュで豪華に見えます。
- ツリー構造の中へのファイル表示
Windowsエクスプローラでのツリー構造表示の中にはフォルダしか出てきませんがNautilusの場合にはファイルも表示できます(もちろんフォルダだけの表示に切り替えることもできます)。
- ズーム機能
フォルダやファイル一覧を表示するメインウィンドウ(メインパネルとも言います)においてズーム表示(ズームイン、ズームアウト)が行えます。
ズーム倍率の種類は固定で、25%,50%,75%,100%,150%,200%,400%の7種類あります。
3個のズームシンボル(「-」:ズームアウト、虫メガネ:最初の倍率に戻す、「+」:ズームイン)をそれぞれクリックすることでズーム切り替え表示が行えます(あるいはズームシンボルを右クリックして表示される倍率一覧ポップアップメニューから倍率を選択します)。
虫メガネのレンズの部分にはカレントの倍率が表示されます。
- フォルダアイコンのカスタマイズ機能
フォルダに対してお好きな画像をカスタムアイコンとして使用できます。
ツリー構造の中にもそのカスタムアイコンが表示されます。
- ノート
フォルダやファイルに付けられるメモ書き付箋紙みたいなものです。
- プレビューアイコン
ファイルのアイコンは単なるファイルタイプベースのアイコンだけではなくコンテンツベースのプレビューアイコンが使用できます。
画像ファイル(gif,jpg,png等)ならそのサムネイル自体がアイコンとなり、テキストファイルならその冒頭の一部の内容自体がアイコンとなります。
尚、音楽ファイル(MP3)については楽譜アイコンが表示されます。
- アイコンサイズの伸縮サポート(アイコンストレッチ)
ファイルのアイコンサイズを自由に伸縮できます。
これはデスクトップアイコンについても同様です。
- エンブレム機能
エンブレムというのは目印という意味で、ファイルアイコンに「読み込み専用」、「ドラフト版」、「すごい!」などといった目印を付加できます。
- 簡易ドキュメントビューア
画像ファイルの実寸サイズ表示はもとよりテキストファイルの中身をメインパネルに表示できます。
尚、テキストファイルの内容表示の場合はNautilusのメニューバーに「フォント」メニューが追加されフォントを変更できます(HelveticaフォントとTimesフォント)。
またテキストファイルの表示においてはズーム表示はできません。
- ミュージックビュー
メインパネルにフォルダ内の音楽ファイル(MP3)だけを一覧表示する機能です(音楽アルバムの仮想フォルダのような感じです)。
メインパネルの下の方には再生・停止等のボタンも表示されNautilusだけで音楽が楽しめます。
音楽ファイルの入ったフォルダアイコンを特にカバー画像と呼びます(実体はフォルダのカスタムアイコンと同じです)。
- ファイルの複製
同一フォルダ内でファイルの複製を作成できます。
(Mac OSではサポート済みの機能でMac OS X製品版におけるファイルのコンテキストメニューには「ヘルプ」、「開く」、「ゴミ箱に入れる」、「複製」、「エイリアスを作る」があります)
尚、WindowsエクスプローラやKonquerorには今のところ「複製」機能はありません。
- アイコン見出しのカスタマイズ
アイコンの下に表示するファイル名以外の情報項目をここではアイコン見出し(Icon Captions)と呼びます。
アイコン見出しとして何(サイズ、タイプ、更新日時、アクセス権等)を表示するかについては用途に合わせてカスタマイズできます(最大3個まで選択可能)。
ズームアウト(縮小)表示されている場合にはアイコン見出しをすべて表示できない場合があります。
(特にズーム倍率が25%の場合にはファイル名自体も表示されません)
ズームイン(拡大)表示することによってアイコン見出しをすべて表示できるようになります。
- サイドバー背景のカスタマイズ
メインパネル内の背景をカスタマイズできるだけでなくサイドバーの背景をもカスタマイズできます。
- 多種多様な検索機能
単純なファイル名検索や更新日付やサイズに着目した検索だけではなく多種多様な条件付けによる検索が行えます。
- 多彩なファイル名検索
単なる前方一致だけではなく中間一致・後方一致等の検索が行えます。
- タイプ検索
特定のファイルタイプ(通常ファイル、テキストファイル、アプリケーション、ミュージック等)に着目した検索が行えます。
- エンブレム検索
特定のエンブレムの付いたファイルだけを検索することができます。
- 複合条件検索
同時に複数の検索条件を指定した複合条件検索が行えます。
- 検索パターンの保存
一度使った検索パターンを「ブックマーク」に登録して再利用できます。
(Windowsエクスプローラの場合にも検索条件の保存はできますが...)
- 未サポート項目
Nautilus 1.0ではKonquerorでサポート済みの以下の機能が実装されていません。
- 印刷機能
- アンドゥ機能
- NFSベースのピアツーピア接続管理(UnixWareのファイルシステム管理ツールのような機能が望まれます)
(2)Nautilusアイコン
デスクトップ上のNautilusのアイコンは「オウムガイ」を模写したイメージになっています。
(「Eazel Services」を含めた各種アイコンのスタイルはMac OSやBeOSでのアイコンスタイルに似た感じを受けます)
Nautilusの起動はNautilusアイコンからの起動の他に端末からの「nautilus &」起動やGNOMEメニューからの起動方法などがあります。
(3)Nautilusの外観
- ファイルマネジャとしてのNautilus
実寸大の画面はこちらです。
(メインパネルの内容は日本語表示も可能です)
尚、リスト形式での表示もできます。
- WebブラウザとしてのNautilus(日本語のコンテンツも表示できます)
実寸大の画面はこちらです。
- Webページのソース表示
Webページを表示した状態で「View as Text」に切り替えるとWebページのソースが表示されます。
(4)「Nautilusについて」の画面
NautilusのHelpメニューでAboutを選択するとこんな画面が表示されます。
(5)Nautilusのメニュー
(6)ドラッグ&ドロップ
Nautilusのメインパネルから他のアプリケーションにドラッグ&ドロップする場合、サムネール表示されたアイコンのままでドラッグ&ドロップができます。
- NautilusからMozillaへのアニメーションGIFファイルのドラッグ&ドロップ
- ドラッグ&ドロップの結果
尚、ファイルのディレクトリ間でのコピーは「Ctrlキーを押したままのドラッグ&ドロップ」で行えます(Ctrlキーを押さない場合は基本的にファイルの移動となります)。
(7)画像ファイルのプレビュー表示(サムネイル表示)
画像ファイルの場合メインパネルでのファイルアイコンはその縮小画像がアイコンとなります。
更にそのプレビュー画像は自由に伸縮(Stretch)することができます(フォルダアイコンの拡大もできます)。
尚、ファイルアイコンの右上に付いている「書き込み禁止」などのマークはEmblem(エンブレム:目印の意)と言われているものです。
Windowsパーティションをマウントして「My Pictures」フォルダを表示してみました。
(8)テキストファイルのプレビュー表示
テキストファイルの場合メインパネルでのファイルアイコンはそのプレビュー画面がアイコンとなります。
更にそのプレビューは画像同様には自由に伸縮することができます。
(9)テキストファイルの内容表示
Nautilusではテキストファイルの内容をメインパネルの中で表示できます。
この場合メニューバーに「Fonts」メニューが追加表示されます。
もちろんテキストエディタの選択もできます。
(10)ファイル名の変更
ファイル名の変更はそのファイルの右クリックメニューの中から「Rename」を選択することによりメインパネルの中で直接変更できます。
(11)ファイルの複合条件検索
従来のMidnight Commanderではごく限られた条件しか指定できませんでした。
しかしNautilusでは次の条件項目を複数組み合わせた複合条件検索ができます。
- Name
- Content
- Type
- Size
- With Emblem
- Last Modified
- Owner
Nautilusを使って「Name」、「Owner」、「Last Modified」条件を組み合わせた複合条件検索を行ってみました。
(12)音楽ファイルアイコン
MP3等の音楽ファイルは楽譜スタイルのアイコンが表示されます。
楽譜アイコンの上にマウスカーソルをかざすと音符マークがポップアップ表示されます。
ついでに特定の音楽ファイルに「Cool」なサングラスエンブレムを付けてみました。
(13)Nautilusのテーマ選択
Editメニューの「Nautilus Themes」を実行するとテーマの切り替えが簡単に行えます。
(Netscape 6/Mozillaのような大きな外観変更まではできないようですが)
- テーマ選択画面
- 「Crux Teal」テーマの適用
「Crux Teal」テーマではズーム用の虫メガネシンボルがテキストボックス風に変化します。
(14)メインパネルでの右クリックメニュー
(15)メインパネルの背景画像の設定
まずEditメニューの「Backgrounds and Emblems」を実行します。
次に背景画像の一覧からお気に入りの画像をメインパネルにドラッグ&ドロップすます。
これでメインパネルの背景画像が変ります。
(しゃぼんだま風にしてみたのがこれです)
(16)サイドバー
Nautilusの画面の左側には4個のサイドバーがあります。
(サイドバーについてはタブ別に非表示化もできます)
- Notes
これはフォルダやファイルに自由に付けられるコメント情報です。
- Help
これはNautilusのマニュアルみたいなものです。
- History
これはWebサイトのアクセス履歴も含みます。
- Tree
階層表示用のこのTreeバーが最も頻繁に使われるのではないかと思います。
(17)外部Webブラウザの選択
Nautilus自体でもWebページの表示はできますがNautilusから外部Webブラウザを選択することもできます。
外部Webブラウザとしては次のものが標準で選択できます。
- Lynx(キャラクタベースのWebブラウザ)
- Mozilla
- Netscape
(18)Apacheアクセス
NautilusでApache(Webサーバ)をアクセスしてみました。
(19)Nautilusフォルダ
各ユーザのホームディレクトリ直下にNautilusという名前のフォルダが作成されます。
(20)Nautilusの状態保持ファイル
Nautilusにおける様々な状態(ファイル別アイコン位置情報やエンブレム情報など)は「.nautilus-metafile.xml」という名前のXML形式ファイルに格納されます。
(21)日本語モードでのNautilus利用
- GNOMEのプログラムメニューにあるNautilus
- Nautilusを使ったデスクトップ
実寸大の画面はこちらです(1024x768)。
- Nautilusデスクトップ上のアイコン拡大
「root のホーム」というデスクトップアイコンを右クリックし、「アイコンに枠を張る」を選択してアイコンサイズを大きくしてみました。
- Nautilusデスクトップメニュー
NautilusデスクトップメニューはGNOMEネイティブのデスクトップメニューと異なります。
- サイドバーの非表示
表示メニューのオプション指定により左側のサイドバーを非表示にできます。
またサイドバー内の個別のタブだけ非表示にすることもできます。
- 日本語テキストファイルの内容表示
メインパネル内の日本語テキストファイルアイコンをダブルクリックするとメインパネル内にその内容を表示することができます。
またメインパネルからテキストファイルをNautilusデスクトップに移動させてからそのアイコンをダブルクリックしてもメインパネルにその内容が表示されます(こんな感じです:Nautilusデスクトップにエンブレム付きアイコンを移動してもそのエンブレムは引き継がれます)。
- リンクの作成
メインパネル内のファイルを選択して右クリックメニューの中から「リンクを作成」を選択するとそこにリンクが作成されます。
リンク名は「xxxx にリンク」という名前になります。
テキストファイルリンクの利用例を以下に示します。
- メインパネルの背景画像のカスタマイズ(Nautilus付属の背景画像以外の使用)
- 編集メニューから「背景とエンブレム」を選択
- 「Background and Emblems」のパターンで「新規パターンを追加」
- Winblue.gifという単純な画像を選択するとメインパネルの背景がWindows Meっぽい青色に変ります。
- ロケーションバーでのオートコンプリート機能
ロケーションバーにディレクトリパスを入力する場合、途中までの文字入力でオートコンプリート(自動補完)機能が動作します(従来のMidnight Commanderには本機能はありません)。
補足:ロケーションバーには通常「場所」と表示されますがロケーションの入力中は「移動」と表示されます(ロケーションを確定してEnterキーを押すと「場所」に戻ります)。
- 検索パターンの保存
検索結果が得られた時点でその検索パターンをブックマークに登録することができます。
尚、ブックマークへの登録名の変更は「ブックマークの編集」で行えます。
- エンブレム検索での条件指定
エンブレム検索での条件指定はエンブレム画像付き表現一覧から選択して指定する方法になっています。
- ファイルの複製
ファイルの右クリックメニューから「複製」を実行すると複製ファイルが作成できます。
- 音楽ファイルの再生
音楽ファイル(MP3)だけを表示する「ミュージックビュー」に切り替えて音楽再生をしてみました。
- リスト表示でのズーム
メインパネルでのズーム表示はアイコンビューのみならずリストビューでも可能です。
- アイコン見出しのカスタマイズについて
- デフォルトのアイコン見出し項目
- ズーム倍率に応じた表示のされ方
- アイコン見出しの変更手順
- サイドバー内でのカスタマイズ
- エンブレムの削除
ファイルに付けたエンブレムの削除は「削除エンブレム」をエンブレム付きファイルにドラッグ&ドロップするだけでOKです。
- ftp利用
Nautilusはftpクライアントとしても利用できます。
- ウィンドウマネジャの取替え
上記で紹介した画像はSawfish上のNautilusですがEnlightenment上でも問題なく動きます。