QEMU on Windows(Debian 3.1 PPC編)
QEMUはPPC(PowerPC)用Linuxも実行させることができます。
FreeOSZoo(http://free.oszoo.org/download.html)にはDebain 3.1 PPCのインストール済み仮想ディスクの圧縮ファイル(debian_sarge_ppc.tar)も公開されています。
ここではそのFreeOSZooで公開されているDebain 3.1 PPC用仮想ディスク相当のものををQEMU on Windows上で作成する方法を簡単に紹介します。
尚、今回使用したQEMU on Windowsは一般公開されているqemu-0.8.0-ppc-2.zipを使用しています。
1.マシン環境
「QEMU on Windows」を動作させるWindowsホストマシン環境は以下の通りです。
- CPU:Pentium 4 560J(3.6GHz)
- メモリ:2GB
- VGAカード:nVIDIA GeForce 6600(VRAM:128MB)
- ホストOS:Windows XP SP1
2.PPC対応QEMU on Windows 0.8.0の導入
PPC対応QEMU on Windows 0.8.0の導入はqemu-0.8.0-ppc-2.zipを解凍するだけでインストールは完了です。
qemu-0.8.0-ppc-2.zipにはPPCのフルシステムエミュレータであるqemu-system-ppc.exeが含まれています。
尚、qemu-0.8.0-ppc-2.zipには仮想ディスクイメージを作成するqemu-img.exeは含んでいないため他のQEMU on Windowsも別途用意しておきます。
更にQEMU環境でDebian 3.1 PPCを実行させるにはQEMU対応カーネルも必要となります。
そのQEMU対応カーネルとしてはhttp://www.overselfresearch.com/kb/download/qemu/kernel-2.4.27-ppc32-prep-debian_sarge_patches-preptool_patch.zipに含まれているvmlinuz-2.4.27.001を使用できます。
3.Debian 3.1 PPCインストールディスクイメージの取得
仮想ディスクにDebian 3.1 PPCをインストールするためにDebian 3.1 PPCインストールディスクイメージを取得しておく必要があります。
今回はftp://ftp.jaist.ac.jp/pub/Linux/Debian-CD/3.1_r1/powerpcからdebian-31r1-powerpc-binary-1.isoというDebian 3.1 PPCインストールディスクイメージファイル(DVDイメージ)をダウンロードして使用しました。
4.Debian 3.1 PPCインストール用仮想ディスクの作成
Debian 3.1 PPCインストール用仮想ディスク(今回は16GBの仮想ディスク)の作成はqemu-img.exeを用いて以下のように行います。
qemu-img.exe create -f qcow debian_sarge_ppc.img 16G
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5.仮想ディスクへのDebian 3.1 PPCのインストール
- QEMUの起動
以下のコマンド(batファイル化が便利)を使用してDebian 3.1 PPCインストールのためのQEMUを起動します。
qemu-system-ppc.exe -L . -m 256 -localtime -hda debian_sarge_ppc.img -cdrom debian-31r1-powerpc-binary-1.iso -boot d
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- boot:プロンプトでの指定
boot:プロンプトでDebian 3.1 PPCインストーラ起動を指定します。
boot: install-powerpc-2.4 ramdisk_size=10000
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- 言語選択
言語選択画面で「日本語」を選択します。
- アーカイブミラー選択
- キーボード配置選択(USBキーボードで使うキーマップ)
選択候補の中に「日本」は無いので「米国」を選択します。
- ディスクのパーティショニング
ここでは「ディスク全体を消去する」を選択します。
「ディスク全体を消去する」を選択すると/dev/hda3がLinuxパーティション(ext3)に割り当てられます。
また/dev/hda4はswapパーティションになります。
/dev/hda1と/dev/hda2はPPC固有のパーティションとして自動割当されます。
- パッケージのインストール
インストールディスクイメージからDebianベースシステム用パッケージがインストールされます。
- インストールの完了
再起動処理が行われますがPPC用QEMUは再起動に対応していないため以下の表示となった時点でQEMUを手動停止させます。
- 仮想ディスクからのブート
Debianベースシステムがインストールできたので今度は仮想ディスクから以下のコマンドで起動します。
qemu-system-ppc.exe -L . -m 256 -localtime -hda debian_sarge_ppc.img -cdrom debian-31r1-powerpc-binary-1.iso -M prep -kernel vmlinuz-2.4.27.001
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- Debianベースシステムの設定
Debian base system configurationの画面からシステムの設定が開始されます。
ここではタイムゾーン、rootパスワード設定、root以外のアカウント作成、APT設定、パッケージの追加インストール、Xの設定と続きます。
※QEMU環境ではDebian 3.1 PPCのXウィンドウは起動できないためXの設定はさらっと流す程度の適用な設定で構いません。
- Debianベースシステム設定の終了
Debianベースシステムの設定が終了するとDebian base system configuration画面に戻ります。
Finish configuring the base systemを選択してインストール・システム設定は終了です。
6.QEMUでのDebian 3.1 PPCの利用
- QEMUでのDebian 3.1 PPCのネットワーク構成
QEMUでのDebian 3.1 PPCのネットワーク構成はQEMU内蔵DHCPサーバからゲストOSへのIP割り当てとなります。
そのIPアドレスは10.0.2.15です。
このネットワーク構成はuserモードネットワークと呼ばれ、ゲストOSから外へは自由にネットワークアクセスできますが、ゲストOSへのアクセスはホストOSだけが許可されます。
しかしホストOSからゲストOSへの直接アクセスは行えません(後述のリダイレクト機能を使用します)。
- QEMUでのDebian 3.1 PPCの起動
Debian 3.1でのインストールではデフォルトでsshdがインストールされるようになっており、ブート時に自動起動されます。
Xウィンドウの使えない環境ではゲストOSの直接コンソール操作は不便ですのでホストOS(Windows)からゲストOSにはssh接続してゲストOSを操作するようにします。
そのためにはQEMUのリダイレクト機能を使用します。
ホストOS側で接続先にlocalhostを指定してそのポートとして5522を指定することでゲストOSにssh接続(ポート:22)できるようにするためには以下のコマンドでQEMUを起動します。
qemu-system-ppc.exe -L . -m 256 -localtime -hda debian_sarge_ppc.img -redir tcp:5522:10.0.2.15:22 -M prep -kernel vmlinuz-2.4.27.001
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- Debian 3.1 PPCのブートメッセージ
- Debian 3.1 PPC自体のコンソール
- ホストOSからゲストOSへのssh接続
ssh対応クライアントとしてPuTTYを使用するケースを紹介します。
- 接続先設定
接続先はゲストOSのIPアドレスではなくlocalhostを指定します。
またポートはリダイレクト設定で指定したポート番号(5522)を指定します。
- ssh接続後の操作
- ゲストOS側のWebサーバ(Apache)アクセス
QEMU起動時のリダイレクトオプションにtcp:5580:10.0.2.15:80を追加するとホストOSからゲストOS側Webサーバ(Apache)アクセスが可能となります。
ホストOSにネットワーク接続されている他のマシンからもこのリダイレクト機能を使用してDebian 3.1 PPCのWebサーバ(Apache)アクセスができます。
[例]
Vine Linux 3.1からのアクセス例
補足:上側はVine Linux 3.1自体のApacheアクセスで下側がDebian 3.1 PPCのApacheアクセス。
- ホストOSへのftp接続
ゲストOSからホストOSへのftp接続も問題なくできます。