Parallels Desktop 2.5 for Mac 日本語版
Parallels DesktopはParallels社が開発しているIntel Mac(32bit)向けのデスクトップ用仮想化ソフトです。
2007年6月にParallels Desktop 2.5 for Mac 日本語版がリリースされました(プロトン社が日本語化を実施)。
※Parallels Desktop 3.0 for Mac英語版は2007年6月7日にParallels社がリリース済み。
※VMware社ではIntel Mac向けにVMware Fusion(32bit/64bit対応)を開発中です(VMware Fusionの画面例)。
※VMware FusionではXenカーネルも使用できますがParallels Desktop 2.5 for MacではXenカーネルは使用できません。
Parallels Desktop for Macの大きな特徴は操作性の簡易性はもとより、ゲストOSとしてWindows(XP/Vista)を使用した場合のMacとの連携性強化です。
例えばMacとWindows間でのファイルのドラッグ&ドロップ機能が使用できます。
またMacデスクトップにWindowsアプリを直接表示することもできます(Windowsデスクトップの表示抑止)。
もちろんWindowsアプリをMac側のDockに登録しておくことも可能です。
ここではParallels Desktop 2.5 for Mac 日本語版の導入とゲストOS(Windows Vista/XP, Vine Linux 4.0)の実行手順を紹介します。
尚、Intel Mac OS X上でWindowsアプリをそのまま実行させる製品としてWineベースのCrossOver Macもあります(X11ベースの表示)。
しかしCrossOver Macでは動作検証済みアプリも少なく、かつ特定アプリとの日本語入力の相性問題も抱えたままであるため実用性では今一歩の感があります。
1.Parallels Desktop 2.5 for Mac 日本語版の導入
まずParallels Desktop 2.5 for Macを使用するにはIntel MacでMac OS X 10.4.6以降の環境が必要となります。
Parallels Desktop 2.5 for Mac 日本語版の導入はそのインストーラを使用して簡単に導入できます。
2.Windows Vistaの仮想マシン設定
ゲストOS(Windows Vista)の仮想マシン設定(仮想マシン環境定義)はOSインストールアシスタント(ウィザード)で行います。
- [ファイル]−[新規](または「新規」ボタン)による新規仮想マシン設定の開始
本操作で「OSインストールアシスタント」が起動します。
- オペレーティングシステムのインストールモードの選択
「Windows高速インストール」オプションを使用すれば画面から離れたままでインストールが完了します。
※「Windows高速インストール」では事前にプロダクトキーやAdministratorのパスワードを定義します。
今回は「カスタム」オプションを使用して通常のWindowsインストール操作と同様にインストールを行うことにしました。
- インストールするオペレーティングシステムの選択
・OSタイプ:Windowsを選択
・OSバージョン:Windows Vistaを選択
- 仮想マシンに割り当てるメモリ
1024MBのメモリ指定としました。
- 仮想ハードディスクのサイズ
デフォルトの32GBのままとしました。
この場合、「拡張可能」オプションを有効にしておきます。
※最初から指定サイズ分の容量をもつファイルを作成する「プレーン」オプションは通常は使用しません。
- 仮想マシン用のネットワークオプションの選択
ホストOS(Parallelsでの正確な呼称はプライマリOS)と同じ物理ネットワークに接続できるようにする「ブリッジイーサネット」型を選択します。
また仮想マシンで使用される実ネットワークインタフェースは「en0:Ethernetアダプタ」を選択します。
尚、AirMac使用なら「en1:AirPort/無線アダプタ」を選択します。
- 仮想マシン名の指定
デフォルトは「Microsoft Windows Vista」ですが長いので「Windows Vista」としました。
尚、詳細オプションとして仮想マシンファイルを格納するフォルダをデフォルト以外の場所に設定することも可能です。
- インストールの即時開始の抑止
デフォルトでは仮想マシン設定後にインストールが即時開始されるようになっています。
設定内容を再確認するために、「Windows Vistaのインストールを開始します」を無効にしておきます。
- 仮想マシン設定内容の見直しと追加設定
仮想マシンの構築エディタで設定内容を見直すと共に共有フォルダの追加設定等を行います(任意)。
3.Windows Vistaのインストールと利用
- Windows Vistaのインストールディスクをセットします。
- Windows Vista用のParallels Desktop画面で仮想マシンの起動を行います。
Windows Vistaのインストーラが起動され言語選択画面が表示されます。
- 以降のインストールの流れ
言語選択以降のインストールの流れは通常のインストールと同じですがネットワークの設定はスキップされます。
これはWindows VistaがParallels Desktopの仮想ネットワークアダプタを自動認識しないためです。
しかしWindows Vistaインストール後にParallels ToolsをインストールするとParallels環境用のネットワークドライバがインストールされネットワークが利用可能となります。
- 最初のログオン画面
インストール中に作成したユーザアカウントでログオンします。
- Parallels Toolsのインストール
ログオン後以下の操作を行います。
[アクション]−[Parallels Toolsのインストール]を選択すると仮想CD-ROMがマウントされます。
その仮想CD-ROMからParallels Toolsのインストールが実行できるようになります。
Parallels Toolsのインストーラはネットワークカードドライバ、Parallelsビデオドライバ等をインストールしてくれます。
更に、Parallels Toolsインストール後はホストOSとゲストOS間のマウス移動がシームレスになります。
- ネットワーク利用
Parallels Toolsインストール中に「ネットワークに接続しました」というVistaのメッセージが表示されます。
- ゲストOSの再起動
Parallels Toolsインストール完了後ゲストOSは自動再起動します。
- 画面解像度の変更
ログオン後に画面解像度を変更します。
Webアクセスも問題なくできます。
- デスクトップ操作
デスクトップ操作は通常の場合と同じです。
- 共有フォルダ
共有フォルダでは実質的にネットワークを介してMac側ファイルをWindowsアプリから利用します。
※例:Windowsアプリが認識するファイルパスは\\.PSF\.Mac\Library\Desktop Pictures\Aqua Blue.jpgというようになります。
※(Windows側とMac側のワークグループ名は同じでなくてもOKです)
- コヒーレンス機能の利用
[表示]−[コヒーレンス]メニューによりWindows Vistaのデスクトップ背景を表示しないようにできます。
MacアプリとWindowsアプリをMacデスクトップ上に同時表示させて操作できるようになります。
下記はコヒーレンス機能によってMacのFinder/SafariとVistaのIE 7(画面下側)が同じMacデスクトップ上にある様子を示しています。
- MacアプリとWindowsアプリとの相互コピー&ペースト確認
コヒーレンスモードでMacのSafariのデータをVistaのメモ帳にコピー&ペーストして、
更にそのVistaのメモ帳のデータをMacのテキストエディットにコピー&ペーストしてみました。
MacアプリとWindowsアプリとの相互コピー&ペーストは問題なく行えました。
- IE 7のDockへの登録
Windows VistaのIE 7をDockに登録します。
Dock中のIE 7を起動すると自動的にWindows Vistaがコヒーレンスモードで起動されてIE 7が表示されます。
4.Windows XPのインストールと利用
Windows XPの仮想マシン設定やインストールはWindows Vistaの場合とほとんど同じです。
但し、Windows XPにはParallels環境用のネットワークドライバが用意されているためインストールの途中でネットワークの設定画面が表示されます。
- Windows XPの仮想マシン設定
(1)インストールモード:カスタム
(2)OSタイプ:Windows
(3)OSバージョン:Windows XP
(4)仮想マシン名:Windows XP
(5)構築エディタでの追加設定
共有フォルダ名として「MacWinShare」を指定
この「MacWinShare」はMac側の「/Users/ユーザ名」直下を表すためのWindows側の名称になります。
- Windows XPのインストール
通常のWindows XPのインストール手順と同じです。
インストール中に仮想ネットワークカードがRealtek RTL8029(AS)として認識されてそのドライバがインストールされます。
- Parallels Toolsのインストール
Windows XPインストールを終えて、ログオン後以下の操作を行います。
[アクション]−[Parallels Toolsのインストール]を選択すると仮想CD-ROMがマウントされます。
その仮想CD-ROMからParallels Toolsのインストールが実行できるようになります。
Parallels Toolsのインストーラはネットワークカードドライバ、Parallelsビデオドライバ等をインストールしてくれます。
更に、Parallels Toolsインストール後はホストOSとゲストOS間のマウス移動がシームレスになります。
- Parallels Share Folders
構築エディタで共有フォルダの設定をしておくとWindows XPのデスクトップ上に「Parallels Share Folders」アイコンが表示されます。
Parallels Share Foldersの中の「.Mac」フォルダはMac側の/Users/ユーザ名/Documentsを表しています。
「.Mac」フォルダについてはWindows側エクスプローラとMac側Finder間での相互ドラッグ&ドロップが可能となります。
- Microsoft Access 2003の利用
Microsoft AccessはWindows専用アプリでありMac版はありません。
コヒーレンス機能を使用してMacデスクトップ上でMicrosoft Accessをそのまま操作できれば便利なこともあります。
そこでまずWindows XPにMicrosoft Access 2003をインストールしてコヒーレンスモードで使用してみます。
コヒーレンスモードではタスクバーも表示されます。
続いてWindow Blindsを導入してMicrosoft Access 2003のルック&フィールをMac OS X風にします。
- Microsoft AccessのDockへの登録
Microsoft AccessをDockに登録します。
Dock中のMicrosoft Accessを起動すると自動的にWindows XPがコヒーレンスモードで起動されてMicrosoft Accessが表示されます。
- Safari 3 パブリックベータ版の利用
Windows版Safari 3 パブリックベータは日本語対応化が徐々に進みVer 3.0.2ではフォント設定変更無しで日本語ページもそのまま表示できるようになりました。
※日本語入力はできないため検索フォーム等ではメモ帳からのコピー&ペーストにて対応要。
下の画像はMacのSafariとWindows用Safari 3 パブリックベータ版を対比表示させたものです。
5.Vine Linux 4.0のインストールと利用
Parallels Desktop for MacではWindows以外にLinux, Solaris等のゲストOSもサポートしています。
今回は手頃なVine Linux 4.0を利用してみました。
- Vine Linux 4.0の仮想マシン設定
(1)インストールモード:カスタム
(2)OSタイプ:Linux
(3)OSバージョン:他のLinux kernel 2.6
(4)仮想マシン用メモリ:512MB
(5)仮想ハードディスクサイズ:8000MB
(6)仮想マシン用のネットワークオプション:ブリッジイーサネット
(7)仮想マシン名:Vine Linux 4.0
(8)構築エディタでの追加設定:なし
- Vine Linux 4.0のインストール
通常のVine Linux 4.0のインストール手順と同じです。
インストール中に仮想ネットワークカード(Realtek RTL-8029)が認識されてそのドライバ(ne2k-pci)が設定されます。
Xウィンドウのドライバはvesaに自動設定されます。
- グラフィカルログイン画面
- デスクトップ画面
Webアクセスや日本語入力も問題なく行えます。
- 中断と再開
Parallels Desktop for MacではゲストOSの中断や再開なども行えます。
ゲストOSの中断はその時点のゲストOSの状態をmemファイルやsavファイルに保存してゲストOSを途中状態のまま終了させることです。
再開はそのmemファイルやsavファイルを使用してゲストOSを中断状態に戻すことを指します。
この中断、再開を使用することでゲストOSをいつでも即時利用できるようになります。
セキュリティを考慮するならログイン画面にした状態で中断させるのが好ましいと思います。
でも個人利用ならデスクトップを表示してGUI操作途中で中断してもいいかと思います。
中断は[アクション]−[中断]メニューで明示的に指示して実行できます。
中断したゲストOSを開始させると自動的に中断状態からの再開となります(極めて高速に再開されます)。
- 擬似コヒーレンス
コヒーレンス機能はゲストOSがWindowsの場合に限定したものですが
PC-UNIXをゲストOSとした場合でもゲストOS内のXアプリをプライマリOSのデスクトップに表示させることができます。
これをここでは擬似コヒーレンスと呼ぶことにします。
この擬似コヒーレンスはゲストOS内のXアプリを単にMac OS X上に表示させるものでありParallels Desktop for Macの特別な機能は使用せずに実現できます。
※Xアプリを他のディスプレイに飛ばすというXの標準機能だけで実現できます。
- プライマリOS(Mac OS X)側操作
X11を起動しxtermから例えば「sudo xhost +」コマンドを実行して他からのXアプリのMac OS Xへの表示を許可します。
- ゲストOS側操作
# export DISPLAY=プライマリOSアドレス:0.0
# gimp & などでXアプリを起動してプライマリOSに表示。
- プライマリOS側でのXアプリ操作
下記はVine Linux 4.0のXアプリ(GIMP, GNOME端末, Webブラウザ)をMac OS X側に表示して操作している様子です。