Red Hat Linux 7

日本語版Red Hat Linux 7が2000年10月にリリースされました。
6.2Jの時は「Stadard」「Deluxe」「Professional」という3個のパッケージに分かれていましたがRed Hat 7では「Deluxe」(10/6リリース)、「Professional」(10/13リリース)の2種類となりました。
尚、米国版Red Hat 7のパッケージは「Standard」、「Deluxe Workstation」、「Professional Server」の3種類用意されています(それ以外の特別パッケージもありますが...)。
今回はサーバ向けの商用ソフトにも関心をもっていたこともあり「Professional」版を導入してみました。
Red Hat Linux 7のカーネルは2.2.16-22(2.2.16ベースの改良版)です。

デスクトップ環境を中心にRed Hat Linux 7の環境をちょっぴりみてみましょう。


(1)Red Hat Linux 7の特徴

(2)XFree86 4.0.1

以前XFree86 3.3.6で(ローエンドPC用)Intel 810ビデオチップを使おうとしたことがあり ますが、その時のインストーラはIntel 810ビデオチップを自動認識せず、手動設定用xf86configツールでのビデオチップ一覧にも「Intel 810」は無く、仕方なくVGAモードでXを立ち上げていました。
Linuxプリインストールマシンの中には「オンボードi810(Xfree86 3.3.6対応) 」をうたっているものもあるのでVGAモード以外でも使えるように設定できるはずなのですが調べる時間も無くVGAモードで我慢していました。

しかし今回のRed Hat 7にはXFree86 4.0.1が標準搭載されています。
これまでのLinuxディストリビューションではXFree86 3.3.6搭載が一般的でしたがRed Hat 7では他のディストリビューションよりも比較的早くXFree86 4.0.1を搭載したようです。
XFree86 4.0.1は従来のものよりも描画性能が改善されているということでクライアント利用で今後普及されていくと思われます。

以下にRed Hat 7をIntel 810ビデオチップ搭載マシンに仮インストールした際に発生したことや、その経過等について紹介します。

Red Hat 7のanaconda(GUIインストーラ)はインストール時のXの設定情報に基づいて/etc/X11/XF86Configと/etc/X11/XF86Config-4を自動生成します。
インストール時にGUIログインのオプション指定でXの定義をしたのですがインストール時にXの設定をテスト確認するための<この設定をテストする>ボタンが表示されず少々不安でした。
一応インストールが完了しリブートするとGUIログイン画面を出すところで以下のエラーが連続発生しました。
「According to /var/run/gdm.pid, gdm was already running. But Seems to have been murdered mysteriously.」
XFree86 4.0.1の動きを見るとXF86Config-4の使用でうまくいっていないようでした。
agpgart.oモジュールもきちんと存在しているし原因がよく分かりませんでした。

試しに「XFree86 -configure」を実行してみましたがこれもabortしてしまいました。

そこでダメ元でXFree86 4.0.1用のxf86configを実行してXの再設定をしてみました。
XFree86 4.0.1用のxf86configは従来のものに比べて指定項目数も少なく操作性が改善されていました(追加された指定項目は特にありません)。
もちろんビデオチップ一覧には「Intel 810」があります。
ちなみにこのxf86configで作成されたXの設定ファイルは/etc/X11/XF86Configだけでした(この新しい/etc/X11/XF86Configの中身を見ると従来とかなり違った内容になっていました)。

xf86configによるXの再設定後は1024x768x16bppの解像度の美しいGNOME画面が無事表示されるようになりました。

KDEのデスクトップもきれいに表示されますがKDE自体の起動やアプリの起動がかなり鈍重に感じました。

(3)GNOMEデスクトップ環境

Red Hat Linux 7付属のGNOMEはVer1.2.4になっています(6.2JではGNOME 1.2.3)。

尚、GNOMEのメニューはすっきりしているのですが「システム」サブメニューは項目が多すぎて分類分けが必要かと思います。

Red Hat 7でのGNOME環境用ウィンドウマネジャのデフォルトはSawfishですが私は昔ながらのEnlightenmentに変えて使用しています(ウィンドウの着せ替え用です)。


(4)GNOMEテーマ(Enlightenment編)

GNOMEのウィンドウマネジャをEnlightenmentにしていくつかのテーマで着せ替えをしてみました。
Red Hat 7の場合Enlightenment用テーマファイルの格納先は/usr/share/enlightenment/themesとなります。
デフォルトのテーマは「Brushed Metal」ですが、デスクトップを両クリック(左右ボタンの同時クリック)してテーマメニューからテーマを選択します。

ここでは数多くのテーマからいくつかをピックアップして紹介します。
(5)GNOMEテーマ(Sawfish編)

Red Hat 7の場合、GNOMEの標準ウィンドウマネジャはSawfishになっていて17個のSawfishテーマファイル(brushed-metalやBrushedMetalII.tar.gzファイル等)が/usr/share/sawfish/0.30.3/themesに予め格納されています(比較的地味なものが多いです)。
ここではいくつかのテーマ(フレームスタイル)について紹介します。

(6)KDEアプリ

特に目新しいことではありませんがKFMで画像のサムネイル表示を行ってみました。

ところでKDEのテーマもずいぶん豊富になってきたようです。
例:Bluezテーマは結構鮮やかな色彩を使っています。


(7)日本語入力環境

Red Hat 7の標準インストールではXIM(X Input Method)としてのkinput2は正しくインストールされないようです(cannaserverは自動起動されるように設定されるようですが...)。
実際、Shift+Spaceキーを押しても日本語入力モードにはなりませんのでgedit等で日本語を入力できません。
そこでインストールCD 2に入っているkinput2-canna-v3-11.i386.rpmをGnoRPMで手動インストールします。
その後は端末画面gedit等で問題無く日本語入力が行えます。


(8)商用フォント

Red Hatディストリビューションには従来より商用フォントとしてダイナフォント5書体が同梱されています。
しかしこれらのフォントは初期インストールでは自動インストールされませんので手動でインストールします。
まずサードパーティーアプリケーションCDからDynaFont-1.0-1.noarch.rpmをインストールします。
これによって/usr/X11R6/lib/X11/fonts/DynaFontディレクトリにxx.ttf, xx.tti, fonts.dirファイルが組み込まれます(これはrpm -qlpで事前確認できます)。
次にXF86Config内のFontPath群に以下の1行を追加します。
FontPath "/usr/X11R6/lib/X11/fonts/TrueType"
FontPath "/usr/X11R6/lib/X11/fonts/DynaFont" ・・・追加する行
FontPath "unix/:7100"

この後Xを再起動するとNCでも商用フォントを選択して利用できるようになります。

(9)GIMP 1.1.25


(10)音楽データ等を楽しむ

sndconfigでサウンドカードを設定しいろんな音楽ファイル等を再生してみました。

(11)ハンコムワード(商用日本語ワープロ)

Red Hat 7には商用ワープロソフトとして韓国の「Honcom Linux社」製のハンコムワードが同梱されています。
試行した感じではLinux対応の日本語ワープロとして結構使えるような印象を受けました。

(12)インターネット接続ツール

インターネットへの接続ツールについてですが個人的にはKPPPによる接続が使い易いと感じています。


(13)NC 4.75(Netscape Communicator)

Red Hat Linux 7付属のNCを初期起動してバージョンを確認したところ4.75でした。
NC4.75でこのオープンギャラリーを眺めてみました。

Red Hat 7付属のNC(4.75)はあまり安定していないようです。
(XFree86 4.0.1等との相性によるものでしょうか...)
REd Hat 7を動作させる環境にも依りますが次のような現象に遭遇しました。
2000年11月10時点ではftp://ftp.redhat.com/pub/redhat/redhat-7.0/にNCの対策版はアップされていないようです。


(14)新LinuxConf

LinuxConfのウィンドウはタブ区切りの形式になり使い易くなりました。


(15)Apache 1.3.12

Red Hat Linux 7ではApacheの環境周りが若干変更されています(特にディレクトリの配置)。
Apacheのtestページにはその注意を促す内容が書かれています。


(16)VNC(Virtual Network Computing)

Red Hat Linux 7の基本インストールだけでVNCのサーバ&クライアントがLinux環境にインストールされます。

(17)Gnumericのバージョンダウン

6.2Jの改訂版ではGnumeric 0.56でしたがRed Hat 7でのGnumericは0.54にバージョンダウンしました。
それが原因かどうか分かりませんが日本語エディタからGnumericスプレッドシート側への日本語データのコピー&ペーストもまたできなくなりました。


(18)Power Tools CD

Professional版、Deluxe版共に「Power Tools CD」という便利ソフト集CD-ROMが付いています。
今回はその中からXFce, xsnow, xearth, xanim等を利用してみました。
特にXFce(Ver 3.4)はSolarisやUnixWare等の商用UNIX系のCDE(Common Desktop Environment)環境でお馴染みのCDEパネルもどきの「メインパネル」(下図参照)というものが使える便利なツールです。





XFceや「Solare」というEnlightenmentテーマ等を使ってGNOMEデスクトップをSolaris風にしてみました。

(19)GKrellM

Red Hat 7のPower Tools CDにはGKrellM 0.9.9が含まれています。
GKrellMは外観(テーマ)を自由に変えられるユニークなシステムモニタです。

(20)テスト版Kernel 2.4等のプレビュー版ソフトについて

Red Hat 7のインストールCD 2のpreviewディレクトリにはテスト版Kernel 2.4が収められています(当然ながら標準インスートルはされませんが)。
とりあえず二つのパッケージ(「kernel-2.4.0-0.26」「devfsd-2.4.0-0.26」)を組み込んでテスト版Kernel 2.4を利用してみました。

尚、米国版Red Hat 7のインストールCD 2のpreviewディレクトリにはテスト版Kernel 2.4の他にもKDE 2.0(KOffice含む), Mozilla M17等が含まれているようです。


(21)IPマスカレードについて

Linux環境ではIPマスカレード機能がよく使われますがRed Hat 7ではファイアウォールの設定やIPマスカレードの設定を簡単にするためのツールとして「Firewall Configuration」が追加されました。
Red Hatの従来バージョンでは以下の手順でIPマスカレードを設定していました。
Red Hat 7のFirewall ConfigurationツールではマスカレードのルールをGUIで定義できます。

尚、TurboLinuxではturbonetcfgツールだけで「IPV4フォワーディング」設定や「IP Masquerading」設定が簡単にできます(パケットフィルタリングを管理するipchainsは必要です)。


(22)その他

Red Hat 7のCD-ROM 2枚に限定してフルインストールしても914パッケージ(2144MB)という膨大なソフトがインストールされます。
もちろんフルインストールは個々のパッケージ選択の煩雑さを避けるためのものであり不要なソフトもかなりインストールされてしまいます。
インストールされたアプリ全てがGNOME/KDEメニューに出る訳ではないのでどんなアプリが入っているのかを確認するのも結構大変そうです。

Red Hat 7は20世紀最後の記念すべきディストリビューションなのでしょうが、さて21世紀になるとRed Hatはどんなディストリビューションとなるのか実に興味深いところです。
当然のこととしてKDEはVer2.0が標準搭載されることでしょう。
KDE 2.0をインストールしてstartkdeでKDEを起動したときに表示される比較的派手なスプラッシュ画面はこちらです:この画面を実際に表示しているのはksplashというプログラムです)。
KDE 2.0用のKEditのツールバーもカラフルになりました。