Red Hat Linux 5.1
1998年6月1日にRed Hat Linux 5.1(カーネル:2.0.34)がリリースされました。
日本語版ではありませんが日本でも「Linux 6-CD Set」(RedHat5.1, S.u.S.E. 5.2他の組み合わせCDパック)や「Official Red Hat Linux 5.1」として入手可能です。
今回のマイナーバージョンアップの最大の特徴はlinuxconfという環境設定ツール(Webインタフェースを含む)の標準搭載です。
またNescape Communicator 4.05も今回から標準装備しています。
Red Hat Linux 5.1での主な変更点は以下の通りです。
- インストーラの改善
- Backボタンサポート
これまでのインストーラにはCancelボタンがありましたが「戻る」という機能を一部兼ねていましたが完全な「戻る」という機能の実装ではありませんでした。
Red Hat Linux 5.1からは完全な「戻る」という機能を実装したBackボタンがインストーラのほとんどの画面に装備されました。
- ブートディスク作成オプションの追加
インストール途中でブートディスク(FD)を作成できるオプションが追加されました。
- インストーラの言語選択サポート
インストーラを起動すると「Choose a Language」画面が出てきます。
この画面でインストーラの言語を選択することができるようになりました。
今回使用した非日本語版には「Japanese」という選択肢は含まれていません。
- インストーラでの日本語キーボードサポート
- インストール元指定でのsmbの復活
インストール元指定でsmbが復活しました。
- linuxconfサポート
ほぼオールラウンドな環境設定を行うツールとしてlinuxconfが標準搭載されました。
Webインタフェースでも利用可能です。
- 新しい画像ビューアの搭載
シェアウェアのxvも搭載されていますがElectric Eyes(ee)という画像ビューアが標準搭載されました。
Electric Eyesはxvの機能をほぼ包含しており画像の加工も可能です。
- arena(Webブラウザ)の削除
Red Hat Linux 5.1ではNetscape Communicatorの標準搭載によりarena(Webブラウザ)はインストールされなくなりました。
尚、大きな実メモリを正しく認識しないという問題は依然として解決されていません。
このため従来通りlilo.confにカーネルパラメータとして設定する必要があります。
ここではRed Hat Linux 5.1での新たな搭載機能(linuxconf)含めて利用環境を紹介します。
(1)インストール手順
インストールの流れは従来とほとんど同じですが若干の変更点があるため一応簡単に紹介をします。
- インストーラのブート
- Welcome to Red Hat Linux!
- Choose a Language
JapaneseはないのでEnglishを選択します。
- Keyboard Type
日本語キーボードの場合jp106を選択します。
- Installation Method
ここではインストール元としてSMBが追加されました。
- Installation Path(InstallかUpgradeの選択)
- Disk Setup
- Active Swap Space
- Partition to Format(フォーマットするパーティションの選択)
- Components to Install
インストールするコンポーネントを選択します。
「Everything」を選択するとすべてのコンポーネントがインストールされ、容量として649MB程消費します。
- Install log
- Installation Status
パッケージがインストールされます(進捗表示)。
- Configure Mouse
- Emulate Three Buttons
- Choose A Card(ビデオカードの選択)
- Monitor Setup
- Screen Configuraion
- Video Memory
- Clocking Configuration
- Select Video Mode(解像度選択)
- Network Configuration
- Load Module(ネットワークカード選択)
- Module Options(ネットワークカードモジュールのオプション設定)
- Configure TCP/IP(TCP/IP構成の設定)
- Configure Network(ドメイン・ホスト名の指定)
- Configure Timezones(Japanを選択)
- Services
- Configure Printer
- Root Password
- Bootdisk
ブートディスク(FD)作成有無の問い合わせが表示されます。
<Yes>を応答するとブートディスクが作成されます。
- Lilo Installation(LILOのインストール先指定)
- Lilo Installation(カーネルパラメータ設定)
通常ここではメモリサイズを指定します(最大16MBまでしか認識しないようです)。
指定例:mem=64M
- Done(インストールの完了)
インストール完了後自動リブートされます。
尚、インストーラによってデフォルトのランレベルは3に設定されています。
- インストールされるパッケージ一覧(Everything選択時)
(2)インストール後の基本設定
- コンソールでのrootログイン
rootでログインします。
メモリが正しく認識されているかどうか等について確認します。
- /etc/X11/XF86Configの設定変更
インストール時にキーボード種別としてjp106を選択することで/etc/sysconfig/keyboardの内容は「KEYTABLE="/usr/lib/kbd/keytables/jp106.map"」に自動設定されます。
しかし、/etc/X11/XF86Configについてはキーボードモデル・レイアウトが日本語キーボードに合うようには自動設定されません。
そこで/etc/X11/XF86Configにおけるキーボードモデル・レイアウトを日本語キーボードに合うように設定変更します。
[変更前]
XkbModel "pc101"
XkbLayout "us"
[変更後]
XkbModel "jp106"
XkbLayout "jp"
- Xの起動確認
startxコマンドでXを起動します。
- updatedbコマンドの実行
ファイル所在場所確認に便利なlocateコマンドを使用できるようにupdatedbコマンドを実行して/var/lib/locatedbを初期作成します。
updatedbコマンドが定期的に自動実行されるように設定すると尚快適です。
- 一般ユーザの作成
rootでXを起動するとデスクトップにcontrol-panelが自動表示されます。
Red Hat Linux 5.0同様にそのcontrol-panelの「User and Group Configuration」を使用して一般ユーザを定義します。
- sndconfigによるサウンドカードの設定
- ネットワーク接続テスト
ping等でネットワーク接続テストを行います。
- インターネット接続の設定
実際の環境に合ったインターネット接続を設定します。
PPP接続の場合はppp-onスクリプト等の準備を行います。
ルータ経由であればppp-onスクリプトは不要です。
- /etc/hostsファイルの確認
/etc/hostsファイルに「自ホストのIPアドレス 自ホスト名.ドメイン名 自ホスト名」の行があることを確認します。
存在しなければその行を追加します。
- ランレベルの変更
デスクトップをインストールしている場合はデフォルトランレベルを3から5に変更することでxdmによるGUIログインが行えるようになります。
/etc/inittab中の「id:3:initdefault:」を「id:5:initdefault:」に変更します。
※LILO boot:プロンプトでランレベルを一時的に変更することもできます。
- リブート
- GUIログイン
Red Hat Linux 5.0と同様のGUIログイン(xdm)画面が表示されます。
この画面からログインします。
- デスクトップ表示
rootでログインするとデフォルトのFvwm95デスクトップ(実体はFvwm2ウィンドウマネジャ)にcontrol-panelが表示されます。
(3)ウィンドウマネジャ
Red Hat Linux 5.0では以下のウィンドウマネジャが使用できます。
- Fvwm95
Red Hat Linux 5.1のデフォルトのウィンドウマネジャです。
Startメニューやタスクバー等、Windows95のルック&フィールをかなり実装しています。
※実際にはfvwm95というパッケージやfvwm95というプログラムがある訳ではありません。
Fvwm95の外観をWindows95っぽく装飾して表示するコマンドは以下のような記述になっています。
※/etc/X11/xinit/Xclientsの中にその記述があります。
exec fvwm2 -cmd 'FvwmM4 -debug /etc/X11/AnotherLevel/fvwm2rc.m4'
- Fvwm2
Fvwm2はFvwmの改良版でFvwm 2.0という位置付けになっていますがそのプログラム(fvwm2)はFvwmのプログラム(fvwm)とは別になっています。
- Fvwm
twmをベースに種々の機能を追加したウィンドウマネジャです。
- AfterStep
NeXT社のマシン用OSであるNEXTSTEPのルック&フィールをもつウィンドウマネジャです。
AfterStepはNEXTSTEP風のウィンドウタイトルバー、ボタン、境界枠の他にメニュー、アイコン等もNEXTSTEP風になっています(変更可能)。
Red Hat Linux 5.0でのAfterStepはafterstepというプログラムではなくfvwm2でのスタイル変更という形で実装されていました。
しかしRed Hat Linux 5.1ではAfterStepというパッケージが独立していてその中でafterstepというバイナリプログラムが存在します。
Fvwm95からAfterStepへの切り替えはFvwm95のStartメニューの[Preferences]−[WM Style]−[Afterstep]の選択で行えます。
AfterStepの右側縦にあるWharfから各種アプリケーションを呼び出して利用できます。
- Lesstif WM
Lesstif WMはAfterStepからWharf部分が省かれた感じのものです。
- twm
twmはXFree86パッケージに標準で含まれるウィンドウマネジャであり、ここで紹介するまでもありません。
(4)主なアプリケーション
- Netscape Communicator 4.05
- Electric Eyes
Electric Eyesはスライドショーもサポートしています。
- lynx
lynxでのOptions設定画面で選択項目がリスト形式で表示されるようになりました。
(5)Linuxconf
Red Hatはシステム設定をグラフィカル操作で実現する方向に向かっており今回のLinuxconfもその一環として提供されるものです。
従来のcontrol-panelはそのうちLinuxconfに完全に置き換わると思われます。
LinuxconfのユーザインタフェースにはGUIモード、テキストモード、Web(html)モードの3種類あります。
- GUIモード
GUIモードのlinuxconfは「linuxconf &」で起動できます。
またcontrol-panelの「System Configuration」からGUIモードのlinuxconfを起動することもできます。
- テキストモード
テキストモードのlinuxconfはコンソール画面やXの端末エミュレータ上で使用できます。
いずれの場合も「linuxconf --text」で起動します。
- Web(html)モード
- inetd経由でlinuxconfサービスを起動させる設定
Web(html)モードでlinuxconfを利用するにはinetd経由でlinuxconfサービスを起動させる設定が必要となります。
具体的には/etc/inetd.confに以下の1行を追加します。
linuxconf stream tcp wait root /bin/linuxconf linuxconf --http
次にinetdデーモンを再起動します。
# /etc/rc.d/init.d/inet restart
- Web(html)モードでlinuxconfアクセスを許可するアクセス元の設定
GUIモード(またはテキストモード)でlinuxconfを起動します。
[Config]−[Networking]−[Misc]−[Linuxconf network access]と辿って行って許可するアクセス元を指定します。
localhost, 自ホスト名, IPアドレス範囲, eth0等の指定ができます。
ここで指定したアクセス元は/etc/conf.linuxconfに登録されます。
- Webアクセス
Netscape Communicatorからhttp://linuxconfサービス稼動のホスト:98/を開くとlinuxconfのトップページが表示されます。
トップページ中の<START>ボタンをクリックするとrootパスワードの入力ポップアップ画面が出てきますのでrootユーザでログインします。
あとはWeb版linuxconfのメニューに沿って操作可能となります。
下の画面はユーザアカウントの作成ページの例です。
ユーザ作成画面で<ACCEPT>ボタンをクリックするとパスワード入力画面が自動表示されます。
(6)日本語HOWTO文書の内容確認
Red Hat Linux 5.1にはhowto-japaneseというパッケージが含まれています。
またそのhowto-japaneseパッケージには/usr/doc/HOWTO/translations/ja/RPM-HOWTO等のテキストファイルが多数含まれています。
それらのテキストファイルはktern上で内容確認できます。
例:cat /usr/doc/HOWTO/translations/ja/RPM-HOWTO