Fedora Core 1
従来Red Hat社は「Red Hat Linux」ファミリと「Red Hat Enterprise Linux」ファミリの2系列のディストリビューションを提供してきました。
従来のコンシューマ向け「Red Hat Linux」系ディストリビューション(この系列の最終バージョンはRed Hat Linux 9)は、Red Hat社がスポンサとなるコミュニティ「Fedoraプロジェクト」にその開発が移され、そのFedoraプロジェクトの最初の成果物として「Fedora Core 1」(Fedora Core リリース1)が2003年11月6日にリリースされました。
※ミラーサイトにある「Fedora Core 1」のisoイメージファイル群は2003年11月5日の日付になっています。
「Fedora」という用語は中折帽の意味ですが、その中折帽をイメージしているRed Hatという名称を考えると、「Fedora Core」が今後のRed Hatの源流になるような予感がします。
「Fedora Core 1」はオープンソースソフトウェアからのみ構成されるため従来の「Red Hat Linux」製品版に同梱されていたような商用ソフトウェアは含まれていません。
Fedora Core 1には日本語版というものはなくインストール時のシステム標準言語を「Japanese」と設定することで日本語のデスクトップ環境になります(Cannaによる日本語入力も可能)。
従来、パワーデスクトップユーザ(開発者含む)は主に「Red Hat Linux」系を使用していましたが「Red Hat Linux」系製品が今後提供されないという問題が生じます。
そこで企業向けの「Red Hat Enterprise Linux 」(version 3)ファミリの「Red Hat Enterprise Linux WS」(企業向けのデスクトップ/ワークステーション)と同等機能をもつ「Red Hat Professional Workstation 」がパワーデスクトップユーザ向けLinuxディストリビューションとして2003年10月31日にリリースされました。
(実際、「Red Hat Professional Workstation 」のインストールCDのラベルには「RED HAT ENTERPRISE LINUX WS version 3」と記載されています:インストールCDは4枚)
ここではデスクトップ環境を中心にFedora Core 1の環境をちょっぴりみてみましょう。
(1)Fedoraプロジェクトの開発ポリシー
Fedoraプロジェクトの開発ポリシーは「最新のオープンソフトウェアをできる限り早くユーザに使ってもらう」ことです(当然バグ付きの前提で...)。
(とは言ってもカーネルはKernel 2.6系ではなく2.4.22ですが...)
「最新のオープンソフトウェアをできる限り早く...」と言うことでFedoraプロジェクトではFedora Coreを業務で使用されることは想定されておらずあくまでも実験的なディストリビューションとしての位置付けとなります。
別の言い方すれば(少し極端ですが)FedoraユーザはFedoraのモルモットユーザということになります(それ位の自覚/覚悟が必要ということです)。
Fedoraプロジェクトではベータ版という言葉を使わずにテスト版という言葉を使うと宣言していますが、ある意味「Fedora Coreは永遠のテスト版」という位置付けと解釈した方がいいのかも知れません。
Fedoraユーザは最新ソフトウェアを使用できる代償として数多くの不具合に遭遇することでしょう。
しかしFedora Coreには何の品質保証もありませんのですべて自己責任で使うことになります。
つまりFedora Coreを使ってバグを発見した際に「Fedora Coreの品質は悪い!」と非難すること自体がナンセンスであると言うことになります。
(2)Fedora Core 1の特徴
- インストール時のメディアチェック機能
Fedora Core 1のインストール時、CD-ROM等のインストールメディアの整合性をチェックすることができます。
チェック結果は「Media Check Result」として表示されます。
問題がなければ「PASS」と表示され、問題があれば「FAIL」と表示されます。
- Red Hat Linuxライクなインストーラ
Fedora Core 1のインストーラはRed Hat Linuxで使用されていたanacondaをベースとしています。
GUIベースのインストーラでインストール画面における従来の「Red Hat」という用語は「Fedora Core」に置き換わっています。
- 追加されたパッケージ
Fedora Core 1のリリースノートによると約70個のパッケージが追加されています(Red Hat Linux専用ツールをFedora対応化したものも含む)。
たとえば以下のようなパッケージが追加されています。
- ACPIデーモン
- Apacheランタイムライブラリ
- Bluetoothサポートパッケージ
- APIドキュメントブラウザ
- dovecot(IMAP/POP3メールサーバ)
- DVD+RW/+R,DVD-RW/-Rメディアマスタリングユティリティ
- epiphany(MozillaベースのGNOME Webブラウザ)
- gpdf(GNOMEベースのpdfビューア)
- nanoテキストエディタ
- sound-juicer(CDリッピングツール)
- yum(パッケージ管理ソフト)
- Fedora Core 1で削除されたパッケージ
Fedora Core 1のリリースノートによると約30個のパッケージが削除されています(Fedora対応化によって不要になったRed Hat専用パッケージを含む)。
たとえば以下のようなパッケージが削除されています。
- galeon(MozillaベースのWebブラウザ)
- LPRng(印刷系はCUPSに一元化)
- pine(非オープンソース)
- redhat-logos(fedora-logosに置き換え)
- redhat-release(fedora-releaseに置き換え)
尚、lilo, sndconfig等は今後のFedora Coreリリースでは削除される予定とのことです。
- Fedora Coreカーネルチューニング
Fedora CoreではLinuxカーネルがかなりチューニングされています。
例:CPUクロック制御、laptopモードサポート、セキュリティホール攻撃影響の減少化対策 等々
(3)Fedora Core 1のインストール
まずFedora Core 1の公開サイトから次の3個のisoイメージファイルをダウンロードしCD-ROMに書き込みます。
・yarrow-i386-disc1.iso(644,864KB):CD#1用
・yarrow-i386-disc2.iso(651,872KB):CD#2用
・yarrow-i386-disc3.iso(630,336KB):CD#3用
インストールの流れは以下のようになります。
基本的にRed Hat Linux 9と同じ部分は説明を省略しています。
- インストールCD#1からのブート
インストールCD#1をセットしてマシンをブートすると以下の画面が表示されます。
グラフィカルモードでインストールを行う場合はそのままEnterキーを押します。
実寸画像はこちらです。
- メディアテスト
これはRed Hat Linux 7.3等でインストールCDからのブート時に「linux mediacheck」オプションを使用した場合と同じ機能です。
インストーラによってインストールCDが検出されるとCDメディアテストをするかどうかの確認画面が表示されます。
メディアテストを行う場合は<OK>を押し、行わない場合は<Skip>を押します。
メディアテストは各CD当り4分程度掛かってしまいますが、パッケージのインストール途中でエラーが発生するのは時間がもったいないのでここでテストしておいた方が無難です。
メディアテストで問題が無ければ次のような画面が表示されます(PASS表示)。
<OK>を押すとCD#1が自動排出され次のCDメディアテストを促す画面が表示されます。
通常はCD#2をセットして<Test>を押します(CD#2のテストが完了すればCD#3をセットします)。
その後のメディアテストを行わないでインストールを始める場合にはCD#1をセットして<Continue>を押します。
尚、全てのメディアテストを終えてインストールを始める場合も同様にCD#1をセットして<Continue>を押します。
メディアテストにおいてテストするCDの順序は特に規定が無いようです。
- GUIインストーラの開始
メディアテストが終了するとanacondaが開始されます。
anacondaの開始後、ビデオカード・モニタータイプ等が自動検出されてXが内部起動しGUIモードのインストール画面になります。
実際にはインストール画面の前に一瞬だけFedoraのロゴ画面が表示されます。
- Language Selection
インストール時に使用される言語のデフォルトはEnglishになっていますのでJapanese(日本語)を選択します。
- キーボード設定
- マウス設定
- モニターの設定
- インストールの種類
パーソナルデスクトップ、ワークステーション、サーバ、カスタムの中からインストール種別を選択します。
- ディスクパーティションの設定
Disk Druidを使用したパーティション編集画面において不良ブロックのチェックオプションが見当たりませんでした。
- ブートローダの設定
- ネットワークの設定
- ファイアウォール設定
「Red Hat Linux 9」では「高」「中」「ファイアウォールなし」の3種類の選択肢がありましたがFedora Core 1では「ファイアウォールなし」「Enable firewall」の2種類になっています。
- 追加の言語サポート
- タイムゾーンの選択
- Rootパスワードを設定
- パッケージグループの選択
- インストール準備完了
- Require Install Media
インストール準備完了の画面で<次>ボタンを押すと、インストールに必要なインストールメディアの確認ダイアログが表示されます。
- ファイルシステムのフォーマット
- パッケージインストールの開始
- インストールメディア(CD)の交換
- ブートディスクの作成(オプション)
- インストールの完了
- インストール後の最初の起動
インストールが完了すると<Reboot>ボタンでリブートします。
- GRUB画面
- スタートアップ表示
システム起動時におけるスタートアップ表示画面は途中まではテキストモードです。
しかし以下のメッセージの表示直後からグラフィカルモードでの進捗表示に切り替わります(グラフィカルモードの表示に切り替わる直前の画面)。
Welcome to Fedora Core
Press 'I' to enter interactive startup.
- システム起動時の進捗表示
プログレスバーだけによる進捗表示と、従来のように起動メッセージも逐次表示するモードの2種類があります。
- License Agreement
- 日付と時刻の設定
- ユーザアカウントの設定
- 追加のCD
追加用のCDは無いのでソフトウェアの追加インストールはここではスキップして先に進みます。
- セットアップを終了
- グラフィカルログイン
- GNOMEスプラッシュ画面
- 最初のGNOMEデスクトップ画面表示
- GNOMEメニュー
GNOMEメニューのカテゴリーはRed Hat Linux 9とほとんど同じです。
- Fedoraの操作(略)
- シャットダウン画面
(4)パッケージ一覧
Fedora Core 1のインストール直後に確認したパッケージ一覧はこちらです。
(5)GNOMEデスクトップ
GNOMEのBluecurve系のテーマには「Bluecurve」や「Bluecurve-classic」等があります。
これらはGNOMEメニューの[個人設定]−[テーマ]で変更できます。
- Fedora Core 1での標準Bluecurveのウィンドウ境界形式
- Fedora Core 1でのBluecurve-classicのウィンドウ境界形式
(6)KDEデスクトップ
(7)SambaによるWindows連携
従来通りFedora Core 1でもSambaを利用してWindowsとのファイル共有が簡単に行えます。
- Sambaクライアント
Fedora Core 1からWindows共有リソースをアクセスするにはKonquerorを起動します。
- smb://マシン名指定の場合
該当マシンの共有リソース一覧が表示されます。
ここに表示されたリソースをダブルクリックするとその内容が表示されます。
日本語ファイル名も表示できます。
日本語ファイル名をもつテキストファイルをKWriteで開いてみました。
- lan://ワ−クグループ名/マシン名指定の場合
Koquerorの中に「SMB」が表示されます。
その「SMB」を開くと「smb://マシン名」が開かれた状態となります。
- Sambaサーバ
Fedora Core 1のSambaサーバを起動し、WindowsエクスプローラからFedora Core 1内のファイルを表示してみた様子はこちらです。
- 日本語名の扱い
Fedora Core 1側で作成した日本語名ディレクリ(例:「FedoraからWinへ」やWindows側からFedora Core 1内に作成した日本語名ディレクリ(例:「Winから」)の名称は問題なく表示されます。
(8)Web/telnet/ssh/ftpサーバの利用
Fedora Core 1のWeb/telnet/ssh/ftpサーバを起動しWindows側からアクセスしてみました。
- Webサーバ(Apache 2.0:httpdパッケージ)
/etc/httpd/conf/httpd.confでのDocumentoRootは/var/www/htmlになっていますが、/var/www/htmlにはindex.htmlが存在しません。
このため/etc/httpd/conf.d/welcome.confでの指定に従って/var/www/error/noindex.htmlの内容が表示されています(下図のページ参照)。
実寸画像はこちらです。
- telnetサーバ
- sshサーバ
Tera Term SSHを利用してrootでリモートログインしてみました。
- ftpサーバ
(8)Windows用Xサーバの利用
Fedora Core 1のrexec, XDMCPを使用してWindowsのXサーバ(ASTEC-X 3.21)からFedora Core 1を操作してみました。