Fedora Core 4でのWindowsアプリケーション実行環境(David)
SpecOps Labs Corp.にて開発されているWindowsアプリケーション実行環境(David)を付属したTurbolinux 11 Desktop(コード名:FUJI)が2005年11月25日にリリースされました。
DavidはMicrosoft Windows自体が無い環境でWindowsアプリケーションをLinux上にインストールしてそのバイナリをそのまま実行させるミドルウェアです。
日本において2005年12月時点でDavidを入手するにはTurbolinux 11 Desktopを購入するしかありません。
Turbolinux 11 Desktopに同梱されているDavidはTurbolinux 11 Desktop用にカスタマイズされていますがFedora Core 4(以下FC4)でも動作します。
David自体はオープンソースではありませんがオープンソースのWINE(Windowsエミュレータ)コンポーネントを一部利用しています。
またDavid環境でのWindowsアプリケーションは性能的にもかなり軽快に動作します。
【FC4のデスクトップ上で動作中のWindowsアプリケーション群:Internet Explorer, Excel, Word, ノーツ等】
実寸画像はこちらです。
DavidはCrossOver Office(2005年12月時点の最新バージョンは「CrossOver Office Professional 5.0」)の後追い製品ですが両者の競争に伴いより一層いいものが出てくることが期待されます。
ここではFC4上のDavid環境でのWindowsアプリケーションインストール&実行結果について簡単に紹介します。
尚、DavidはKDE環境とGNOME環境で動作可能です。
1.David環境の構築
- Davidのインストール
以下のパッケージファイルをインストールします。
David-0.7-2_jp_18.i686.rpm
Office2kEnabler-0.1-alpha.i686.rpm
Word2kEnabler-0.1-alpha.i686.rpm
Excel2kEnabler-0.1-alpha.i686.rpm
PowerpntEnabler-0.1-alpha.i686.rpm
Office2kEnabler, Word2kEnabler, Excel2kEnabler, PowerpntEnablerパッケージには実体ファイルはありません。
単に、/opt/david/enablerディレクトリにそれぞれ673, 826, 641, 911というenabler番号の空ファイルが作成されるだけです。
- Dドライブの作成
Windowsアプリケーションのインストールは基本的にそのsetup.exeをDavid環境のDMCコンソール(Windowsでの「プログラムの追加と削除」に相当)から行います。
Windowsアプリケーションのインストールファイルは必ずしもCD-ROMドライブになくても構いません(NFSマウントしたマウント先でも可)。
しかしインストーラによってはCD-ROMドライブを前提にしているものもあります。
Davidをインストールすると/root/.wine/dosdevicesに以下のディレクトリを自動生成します。
- a:
/mnt/floppyへのシンボリックリンクです。
- c:
/root/.wine/drive_cへのシンボリックリンクです。
- d:
/mnt/cdromへのシンボリックリンクです。
FC4環境では/mnt/cdromは存在しないので「ln -s /media/cdrecorder /mnt/cdrom」のようにしてDドライブが使えるようにしておきます。
- f:
/rootへのシンボリックリンクです。
- z:
/へのシンボリックリンクです。
- KDE/GNOMEシステムトレイへのDavidシステムトレイの常駐化
DavidをインストールするとKDE起動時自動的にKDEのシステムトレイにDavidシステムトレイが常駐するように設定されます。
しかしGNOME環境ではそのような設定は自動的には行われません。
GNOME環境では/opt/david/bin/davidsystray.shでGNOMEパネルにDavidシステムトレイが常駐させる必要があります。
davidsystray.shは/opt/david/DMCにあるレジストリファイル(system.reg, user.reg)をカレントユーザのホームディレクトリにコピーする処理を含んでいます。
- Davidシステムトレイ
- Davidエクスプローラ
DavidエクスプローラはWindowsエクスプローラのように使用できるファイルマネジャです。
- David管理コンソール
David管理コンソールは主にWindowsアプリケーションの追加と削除を行う管理ツールです。
下記は種々のWindowsアプリケーションをインストールした後の状態です。
- hostsファイルについて
David環境で使用されるhostsファイルはLinux側の/etc/hostsファイルです。
David環境のc:\windowsにはhostsファイルは存在しません。
2.Microsoft Office 2000 Premium
今回使用したOffice 2000はMicrosoft Office 2000 PremiumのUpgrade版です。
インストールはDavid管理コンソールから行います。
David管理コンソールのアプリケーションメインのアプリケーション管理における「プログラムの追加」タブの<参照>ボタンでSETUP.EXEの場所を指定してインストーラを起動します。
Upgrade版のためインストール時に旧バージョンのCD-ROMのセット要求がきますが問題なく認識されます。
Microsoft Office 2000はWord, Excel, PowerPoint, Access含めてフルインストールしてみました。
インストール時にWindowsシステムの再起動が必要となりますがDavidがWindowsの再起動をエミュレートしてくれます。
今回使用したDavidのバージョンは0.7でサポート対象はWord, Excel, PowerPointとなっていますがAccessも制限付きで動作します。
- KDEのプログラムメニュー
Microsoft Office 2000をインストールするとKDEのプログラムメニューにWindowsアプリケーションが登録されます。
Microsoft Wordを起動するコマンドは「/opt/david/bin/david "C:\Program Files\Microsoft Office\Office\WINWORD.EXE"」となっています。
- Word
日本語入力ができ、日本語ファイル名での保存もできます。
但し、横と縦のルーラーが表示されません(これは既知の制限事項になっています)。
またウィンドウ再描画上の問題もあります。
- Excel
Excelシートで日本語入力もできます。
Excel関数はもとよりVBAもほとんど問題なく動作しますがOLEアプリケーション連携用GetObject関数が失敗します。
※Windowsアプリケーション同士のOLEオブジェクトの埋め込み(Word文書へのExcelオブジェクトの埋め込み等)も失敗します。
[データ]−[外部データの取り込み]−[新しいデータベースクエリ]は動作しません。
Office 2000付属のSAMPLES.XLSを開いてWindows API関数の一つであるGetUserName関数を実行するとLinuxにログインしているユーザ(root)が表示されます。
- PowerPoint
- Access
Accessを動作させるためにはDavidのExcelイネーブラをAccessに適用すればOKです。
Office 2000付属のNorthwind.mdbをAccessで使用してみました(Northwindのスタートアップウィンドウ表示はエラーとなります)。
テーブルのExcel形式でのエクスポートは問題ありません。
円記号はバックスラッシュとして表示されます。
実寸画像はこちらです。
フォームウィザードの利用はエラーとなります。
- Internet Explorer 5
Office 2000付属のIE5(Internet Explorer 5)を使用してみました。
実寸画像はこちらです。
IE5ではフォームへの日本語入力も問題なく行えます。
IE5でFC4のApache Test Pageを表示してみました。
- Outlook Express 5
Office 2000付属のOE5(Internet Explorer 5)を使用してみました。
メールの受信はできますが受信後にOE5を再起動すると受信トレイが空になる現象が発生しました。
ちなみにメール送信はエラーが発生して送信できませんでした。
どうもIEよりもOEの方がWindows依存度が高いようです。
- Windows Media Player 6.1
Office 2000付属のWMP6.1(Windows Media Player 6)でMPEGファイルを再生してみました。
サウンド再生も問題ありません。
3.Becky! Internet Mail (version 2)
- インストール
セットアップファイルをsetup.exeに名称変更してDavid管理コンソールからインストールします。
インストール先はデフォルトのままとします。
- メール受信:問題なし
添付ファイル付きメールの受信も問題なくできます。
- メール送信:問題なし
メールでの日本語入力や添付ファイル付きメールの送信も問題なくできます。
- Microsoft Officeファイルの扱い
Becky!を使用すると日本語データを含む日本語ファイル名のMicrosoft Officeファイルの送受信が問題なく行えます。
これによってExcel形式の調査票を受信して、それに調査結果を記入してその回答ファイルを送付するといった一般的なオフィスでのやりとりがDavid環境でも問題なく行えるようになります。
4.ロータス ノーツ R5
5.その他のWindowsアプリケーション(インストールと実行)
- Acrobat Reader 4.05:問題なし
※David環境でAcrobat Readerを使用するまでもなくFC4環境でLinux版のAdobe Readerを使用すれば済む話です。
- Netscape 7.1:ほとんど問題なし
Javaアプレットは実行できません。
※David環境でNetscapeを使用するまでもなくFC4付属のMozilla Firefoxを使用すれば済む話です。
- Tera Term Pro:問題なし
Tera Term ProでTera Term Pro自体が動作しているFC4(localhost)に接続してみました。
※David環境でTera Term Proを使用するまでもなくFC4付属の端末エミュレータを使用すれば済む話です。
- 一太郎 2004:インストール自体不可(「ファイルのコピーができません。」エラー)