AnyDeskによるHyper-V仮想Ubuntuでのサウンド再生
AnyDeskのWindows版ver 8系やLinux版6.4系では接続先デバイスのマイク音に加えて接続先デバイスのシステムサウンド(動画等の再生音)の接続元への転送機能がサポートされたようです。
ここではAnyDeskでのシステムサウンドの転送機能について触れたいと思います。
Linux実機のようにLinux仮想マシンでも動画等のサウンドをBGMとして聞きながらリラックスしてLinux操作をしたいというニーズもあるかと思います。
ところがWindows上のHyper-V仮想マシンにインストールしたUbuntuで動画等を再生してもそのサウンドはどこからも聞こえてきません。
それは「設定」−「サウンド」での出力デバイスが「Dummy Output」になってしまうためです。
この対策としてよく知られていることはUbuntuへのxrdpの導入です。
xrdpの導入手順についてはここでは省略しますが、xrdpを導入してPowerShellで環境を整えることによってLinux仮想マシンを起動すると見慣れた拡張セッション(Enhanced Session)のダイアログが表示されてオーディオ設定もできるようになります。
ログイン後は「設定」−「サウンド」での出力デバイスが「xrdp-sink」になっていることも確認できて母艦のWindows側のスピーカからのテストサウンド出力も可能となります。
実はxrdpを導入したUbuntuに単純にAnyDeskを導入するとxrdpとanydeskのサービスは両方とも起動しますがAnyDeskのトップ画面を表示することができなくなります。
しかしxrdpを導入しなくてもAnyDesk ver 6.4.0でサポートされているシステムサウンドの転送機能を使用することでWindows側からサウンド出力することが可能となります。
今回はHyper-V上のUbuntu 24.04.1(hvubt2404仮想マシン)からHyper-V上のWindows 11(hvwin11a仮想マシン)へサウンド転送して母艦のWindows 11実機のスピーカからサウンドを鳴らす手順を中心にご紹介致します。
試行環境
PC実機
(1)OS:Windows 11 22H2
(2)AnyDesk:ver 8.0.14(今回のテストのメインではありません)
Hyper-V上のLinux
(1)仮想マシン名:hvubt2404
(2)OS:Ubuntu 24.04.1
※ ダウンロードしたubuntu-24.04.1-desktop-amd64.isoからのクリーンインストール版です。
(3)AnyDesk:ver 6.4.0
Hyper-V上のWindows
(1)仮想マシン名:hvwin11a
(2)OS:Windows 11 22H2
(3)AnyDesk:ver 9.0.1
手順
Hyper-V上のUbuntu 24.04.1(hvubt2404仮想マシン)側での操作(その1)
(1)AnyDeskを使用するにあたってディスプレイマネジャはWaylandではなくXorgにしておく必要があります。
(2)xrdpの導入はスキップします。
(3)AnyDesk ver 6.4.0より古いバージョンのAnyDeskがインストールされていれば次のようにアップグレードします。
sudo apt remove anydesk ※ --purge指定なしのためライセンス、AnyDesk ID、エイリアス等は次のinstallに引き継がれます。
sudo apt install ./anydesk_6.4.0-1.amd64.deb
Hyper-V上のWindows 11(hvwin11a仮想マシン)側での操作
(1)AnyDeskの起動(無料ライセンスでも構いません)
(2)hvubt2404仮想マシンのAnyDeskに接続します。
(3)hvwin11a仮想マシンにはhvubt2404仮想マシンのデスクトップが表示されますがhvwin11a仮想マシンはサウンド再生のためだけの用途のため通常はそのウィンドウを最小化しておきます。
Hyper-V上のUbuntu 24.04.1(hvubt2404仮想マシン)側での操作(その2)
(1)動画ファイル(xxx.mp4等)を再生します。
下記はhvubt2404仮想マシン側動画のサウンドがhvwin11a仮想マシン側に転送されていることを示しています。
※ hvwin11a仮想マシン側の「サウンド」−「再生」タブでの音量レベルが反応しています。
結局、Hyper-V上のUbuntu 24.04.1(hvubt2404仮想マシン)の動画ファイルの再生サウンドはHyper-Vの母艦のWindows PCのスピーカから聞こえてくることになります。
(2)下記はhvubt2404仮想マシン側でYouTube動画のサウンドをBGMとして流しながらLinuxコマンドを操作している様子です。
(3)Amazon Prime Video/NHKプラスの視聴について(Chrome利用)
Hyper-V上のUbuntu 24.04.1(hvubt2404仮想マシン)のChromeでAmazon Prime Video/NHKプラスを再生した場合の映像はhvubt2404仮想マシンとhvwin11a仮想マシンの両方から見ることができます。
また、そのサウンドはHyper-Vの母艦のWindows PCのスピーカから聞こえてきます。
スマホへのサウンド転送例
AndroidスマホやiPhoneからhvubt2404仮想マシン側のAnyDeskに接続してhvubt2404仮想マシン側の動画サウンドをスマホ側で再生することもできます。
※ 簡単に言うとスマホをHyper-VのLinux仮想マシンのワイヤレススピーカとして利用することもできるということです。
AndroidスマホをLinux仮想マシンのワイヤレススピーカとして利用する例
テストしたAndroidスマホ
(1)機種:Samsung Galaxy S22
(2)AnyDesk:ver 7.2.0の無料ライセンス版
Androidスマホからhvubt2404仮想マシンへの接続でhvubt2404仮想マシン側の動画を再生するとそのサウンドがAndroidスマホ側から聞こえてきます。
【hvubt2404仮想マシン側の動画がS22側からサウンド再生されている様子をS22側で録画した動画の例】
※ 再生画面をクリックしてミュートを解除して視聴してみて下さい(実際の録画動画は縦長 ですが下側の黒い余白部分はカットしてあります)。
S22の「サウンドとバイブ」設定について
S22の「設定」−「サウンドとバイブ」の設定については[サウンド](デフォルト)、[バイブ]、[サイレント]の三種類のモードがありますがどのモードでもhvubt2404仮想マシン側の動画再生サウンドをS22側から聞くことができます。
iPhoneをLinux仮想マシンのワイヤレススピーカとして利用する例
テストしたiPhone
(1)機種:iPhone 8 Plus
(2)AnyDesk:ver 7.1.1の無料ライセンス版
iPhoneからhvubt2404仮想マシンへの接続でhvubt2404仮想マシン側の動画を再生するとそのサウンドがiPhone側から聞こえてきます。
iPhoneのサイレントスイッチについて
iPhone本体の左側面の一番上にあるサイレントスイッチを左にスライドしてマナーモードにしてもiPhoneの動画サウンドはiPhoneから聞こえてきますが、
そのマナーモード状態ではhvubt2404仮想マシン側の動画再生サウンドはiPhoneからは聞こえてきません。
しかしiPhoneのマナーモードを解除することによってhvubt2404仮想マシン側の動画再生サウンドがiPhoneから聞こえてくるようになります。
ちなみにhvubt2404仮想マシンのデスクトップのiPhoneでの表示位置はS22とは違ってiPhoneの縦長画面の中央となります。
スマホからLinux実機へのAnyDesk接続でのサウンド転送について
スマホからhvubt2404仮想マシンへの接続ではhvubt2404仮想マシンからは音は鳴らないためスマホをワイヤレススピーカとして位置付けて使用することができました。
しかしスマホからUbuntu 24.04.1の実機へのAnyDesk接続では実機側の動画再生サウンドが実機側とスマホ側の両方から聞こえてしまい耳障りに感じるかも知れません。
スマホをワイヤレススピーカとして使用するのはあくまでもLinux仮想マシンへのAnyDesk接続の場合のみと考えた方が良さそうです。
サウンド転送可否のパターンについて
サウンド転送可否はAnyDeskの接続元と接続先の組み合わせによって異なるようです。
【例】
(1)hvwin11a仮想マシン(AnyDesk ver 9.0.1)からAndroidスマホ(S22:AnyDesk ver 7.2.0)へのAnyDesk接続ではS22側のYouTube等のサウンドはhvwin11a仮想マシンからは聞こえませんでした(この組み合わせで転送可能なのはあくまでもS22側のマイク音声のみのようです)。
(2)S22のAnyDesk ver 7.2.0からWindows実機のAnyDesk ver 8.0.14への接続ではWindows側のサウンドがS22側にサウンド転送されます。
(3)iPhoneのAnyDesk ver 7.1.1からWindows実機のAnyDesk ver 8.0.14への接続でもWindows側のサウンドがiPhone側にサウンド転送されます。
(4)S22のAnyDesk ver 7.2.0からUbuntu 24.04.1のAnyDesk ver 6.3.3への接続ではUbuntu側のサウンドがS22側では再生されませんでした。
(5)Androidスマホ(S22:AnyDesk ver 7.2.0)から実機のUbuntu 24.04.1(AnyDesk 6.4.0)やWindows 11(AnyDesk:ver 8.0.14)への接続では、その実機側の動画のサウンドは実機側とS22の両方から聞こえてきます。
これについてはApowerMirrorのようにスマホとPCのどちらか一方からのみ聞こえるようなオプション設定機能が必要かと思います。