Xen 3.1.3(Oracle VM編)


Oracle VMはOracle社が無償で公開しているXenベースのサーバ仮想化ソフトウェアです。
Oracle VMは「VM Server」と「VM Manager」から構成されています(32ビット版と64ビット版は同じもので区別はありません)。

(1)VM Server
VM ServerはOEL(Oracle Enterprise Linux)のサブセットにXen本体とエージェント機能(VM Managerからの要求受付機能)を加えたLinux OSです。
VM Serverはそれ自体がXen機能に特化したLinux OSですがXen対応のGUI管理ツールは持ちません(デスクトップなし)。
仮想マシン(DomainU/HVMドメイン)はこのVM Server上で実行されます。
DomainUだけを使用するのであればIntel VT/AMD-Vに対応していないマシンにも導入して利用できます(VMware環境にインストールして試験的利用も可能)。
Oracle VM Server 2.1.1(Xen 3.1.3対応版)は2008年3月にリリースされましたが、そのベースとなるOELはOEL 5.1(Release 5 Update 1)ではなくOEL 5のようです。
尚、OEL 5にOracle VM Server 2.1.1付属のrpmパッケージのいくつかをインストールするとデスクトップ付きのVM Serverになります。

(2)VM Manager
Xenの仮想マシン(DomainU/HVMドメイン)全体のライフサイクル(生成から削除まで)をOracleデータベースで一括管理するWebベースのリモート管理ツールです。
ここでのOracleデータベースは無償のOracle XE(Oracle Database 10g Express Edition)です。
(Oracle XEは単独利用も可能)
VM ManagerはOC4J(J2EEアプリケーション実行環境)で動作するOracle Webアプリケーションとして実装されています。
Oracle VM Manager 2.1.1はOEL 4.5(Release 4 Update 5)以降のOS上での動作が保証されています。

Oracle VMの特徴は以下の通りです。
(1)仮想マシンの実行OSと管理OSが完全に分離しています(XenServer/XenExpressライクな動作環境)。
但し、Xenネーティブ機能を利用するだけならVM Serverだけでも仮想マシンを作成して実行させることができます。
(2)一つのVM Managerで複数のVM Server群を管理できます。
あるまとまりをもったVM Serverのグループをサーバプールと呼びます。
(3)仮想マシンの情報はすべてOracleデータベースで管理されているためアドホックな管理・稼働レポートも作成することができます。
しかもOC4JベースのアプリケーションもVM Managerマシンに追加して利用することができます。
(4)VM Serverは準仮想化と完全仮想化をサポートしていますが完全仮想化に対応していないマシンにもVM Serverを導入できます。
(5)VM Managerの仮想マシンコンソールを使用してVNC経由でゲストOSをインストール/実行操作することができます。
(6)Oracle VM用にいくつかのゲストOSインストール用テンプレートが公開されています。
(7)VM Manager自体はLinux専用ですが、WindowsからWebブラウザを介してVM Managerの機能を使用できます。
(8)VM Serverや仮想マシンを管理・監視するOVS Agent(VM Server側)とVM Managerの間はsslを利用したXML-RPCプロトコル通信が行われます。
(9)その他、盛り沢山の機能・特徴を備えていますがOSインストールメディアもサーバに登録しないと使用できない等の煩雑さもあります。

ここではVM Serverの構築、VM Managerの導入、仮想マシンの作成・実行例を中心にVM Serverのデスクトップ化方法も紹介します。
尚、今回は実メモリ8GB、Core 2 Quad搭載マシンで32ビット版VM Server/VM Managerを使用しました。


1.Oracle VMの環境構築に最低限必要なソフトウェア



2.VM Serverのインストール

VM ServerのインストールはOELをテキストベースでインストールする手順とほぼ同様です。
VM ServerのインストールではアップグレードインストールはありますがOEL5からのアップグレードなるものはありません。
Xの設定やパッケージの選択機能はありませんが、Oracle VM Agentへの接続用パスワードの入力が求められます(rootパスワードとは別もの)。

VM Serverのインストールの流れは以下の通りです。



3.VM Manager用OS(OEL 5.1)のインストール

通常のOEL 5.1のインストール方法で構いませんが以下の注意事項があります。
(1)最低限1024MBのswap領域が無いとVM Managerのインストールでエラー停止しますのでswap領域は必ず割り当てます。
(2)VM Managerのインストールでは各種WebインタフェースのツールがインストールされますがApacheは必要ありません。
但し、仮想マシンにOSをインストールする場合にそのインストールメディアロケーションをhttpのURLで指定する場合はApacheを導入しておきます。
(3)「仮想化」機能はインストール不要です。
(4)FirefoxでゲストOSのインストール操作ができるためデスクトップ環境(GNOME)もインストールします(必須ではありません)。
(5)8888及び8899ポートは開いた状態にしておく必要があります。
(6)libaioパッケージはVM Managerインストールに必要なため削除しないで下さい。


4.OEL 5.1へのVM Managerの導入



5.VM Managerによる仮想マシンの作成から実行までの手順例

ここではOEL 5用DomainU(準仮想化ドメイン)の仮想マシン作成からインストール・実行までの手順を紹介します。


6.VM ServerとVM Manager兼用サーバの構築とHVMドメインの実行例

Oracle VM構成の要件はVM ServerマシンとVM Manager導入マシンの別マシン化ですが、
VM ServerマシンにVM Managerを導入して一台で手軽に使用することもできます(DomainU・HVMドメイン共に動作可能)。
※この構成はOracle VMのハードウェア構成要件から外れるためあくまでもテスト的な利用形態です。



7.デスクトップ付きVM Server環境の構築(VM Serverのデスクトップ化)

通常VM Serverマシンはログインプロンプトのままで問題ありません。
しかしGUI系の運用支援ツールを使用したい場合はデスクトップが必要となります。
またXenをVMware Workstationのように手軽に使用してみたいというニーズもあるかも知れません。
(Xenの準仮想化ではVMware Workstationよりも高速にゲストOSが動作するようです)

デスクトップ付きVM Server環境の構築方法には次の二通りあります。
(1)OEL 5にVM Server固有のrpmパッケージを追加(またはアップグレード)インストールする方式
OEL 5にVM Server固有のrpmパッケージを追加(またはアップグレード)インストールして設定ファイルを変更する方式です。
これは比較的無難な方式ですが少し手操作が多くなるのが難点です。

(2)OEL 5環境にVM Serverをアップグレードインストールする方式
本方式では、まずOEL 5環境にVM Server付属のenterprise-linux-ovs-5-0.10.i386.rpmだけを強制インストールします。
次にVM Serverのインストーラを起動するとそのOEL 5環境は「VM Serverインストール済み」と解釈されます。
これによってVM Serverはアップグレードインストールを実施することになります。
しかし本方式ではVM Serverインストーラが一部のパッケージのインストールをスキップします。
また日本語入力環境に不整合が生じたりすることもあります。

ここではOEL 5にVM Server固有のrpmパッケージを追加(またはアップグレード)インストールする方式の手順を紹介します。
尚、以下のコマンドはOEL 5のインストールで追加のソフトとして「ウェブサーバ」だけを選択しているものとしています。