オープンギャラリー：Xen 3.0.3(Vine Linux 4実行編)

Xen 3.0.3(Vine Linux 4実行編)

Vine Linux 4にはXenの公式パッケージは用意されていませんがFedora Core 6やCentOS 5のDomainUとして実行させることは比較的簡単に行えます。
その方法には次の二通りあります。

xensource(http://www.xensource.com/)で公開されているカーネルとカーネルモジュールの利用方式
これはVine Linux 4をNetBSD 4のDomainUとして実行させる方式とほぼ同様の最も簡単な方式です。
Vine Linux 4をNetBSD 4のDomainUとして実行させる方式自体はXen 3.0(NetBSD 4.0/Xen編)をご参照下さい。
Fedora Core 6(FC6)パッケージの利用方式
これはVine Linux 4にFC6用の一部のパッケージを導入し、Xen対応のための設定変更だけでDomainUで実行可能とする方式です。
本方式ではFC6のVirtual Machine Consoleとの連携も可能となります。

ここではデスクトップ環境をもつVine Linux 4にxensourceで公開されているXenカーネルとカーネルモジュールを適用する方式をまず簡単に紹介します。
次にFC6用の公式パッケージをVine Linux 4に導入してXen 3.0.3(FC6/CentOS 5)のDomainUとして実行させる詳細手順を紹介します(但し、VMware環境)。
尚、DomainU上のVine Linux 4はVNC/XDMCP接続でGUI操作できるようにします。
※デスクトップ環境を持たないVine Linux 4をDomainUに対応させる手順は更に簡単になります(仮想フレームバッファの導入が不要になります)。

今回使用したPCのハードウェア/ソフトウェア構成は以下の通りです。
・CPU：Core 2 Duo E6600
・チップセット：Intel P965
・メモリ：3GB
・VGAカード：nVIDIA GeForce 7600 GT(VRAM 256MB)
・HDD：S-ATA 250GB
・LANカード：Intel PRO/100 S
・VMware：VMware Workstation 5.5/6
・VMware上のOS(Domain0)：FC6/CentOS 5

■ xensourceで公開されているカーネルとカーネルモジュールの利用方式

FC6へのxensourceで公開されているXen 3.0.3用tarボールの取得と展開
FC6側にてxensource(http://www.xensource.com/)で公開されているxen-3.0.3_0-install-x86_32p.tgzをダウンロードします。
ここでは/root直下にダウンロードして展開するものとします。
# tar zxvf xen-3.0.3_0-install-x86_32p.tgz
[補足説明]
(1)/root/dist直下に展開(解凍)されたinstall.shは実行しません。
Xenツールのインストールを含むinstall.shを実行してしまうとFC6側の元々のXen機能がまともに動作しなくなります。
(2)DomainUとして使用するカーネルは/root/dist/install/boot/vmlinuz-2.6.16.29-xenです。
(3)またVine Linux 4側で使用するカーネルモジュールは/root/dist/install/lib/modules/2.6.16.29-xenです。
Vine Linux 4用DomainUへのGUIログイン環境の構築(VNCサーバと仮想フレームバッファの導入)
VNCクライアントから実ビデオカードを持たないDomainU(Vine Linux 4)にXDMCP接続してGUI操作できるように仮想フレームバッファを導入します。
その詳細手順は「仮想フレームバッファ(Vine Linux 4.0編)」を参照して下さい(手順変更は不要です)。
Vine Linux 4(DomainU)側へのカーネルモジュールのコピーとネットワーク設定の一部変更
まずVine Linux 4のHDDをイメージファイル化してFC6側に取り込みます。
尚、Vine Linux 4のイメージファイルをここでは/root/vine40domu.imgとします。
次に以下のコマンドでVine Linux 4のイメージファイルにDomainU用カーネルモジュールをコピーします。
更に、Vine Linux 4側の/etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0の内容も一部変更します。
# mount -o loop,offset=32256 /root/vine40domu.img /mnt
# cp -Ra /root/dist/install/lib/modules/2.6.16.29-xen /mnt/lib/modules
# vi /mnt/etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0
HWADDR行を削除します。
# umount /mnt

Vine Linux 4用ドメイン構成ファイルの作成
以下の内容をもつVine Linux 4用ドメイン構成ファイル(/etc/xen/xmvine40u)を用意します。
FC6側(Domain0)のカーネルは/boot/vmlinuz-2.6.18-1.2798.fc6xenですが、
Vine Linux 4側(DomainU)のカーネルは/root/dist/install/boot/vmlinuz-2.6.16.29-xenを使用します。

kernel = "/root/dist/install/boot/vmlinuz-2.6.16.29-xen"
memory = 256
name = "Vine40U"
vif = [ 'mac=00:16:3e:00:00:11, bridge=xenbr0' ]
disk = [ 'file:/root/vine40domu.img,hda,w' ]
root = "/dev/hda1 ro"
extra = "5"

DomainUの起動
# xm create -c xmvine40u
※構成ファイルは/etc/xenから探索されます。
Kudzu画面での操作
DomainUでは実際のネットワークカードが存在しないため実際のネットワークカードの設定をどうするかの問合せ画面が表示されます。
まず「Welcome to Kudzu」画面が表示されたらEnterキーを押し、次の「Hardware Removed」(ネットワークカードの取り外し)画面でF3キー(Ignore/Keep All)を押します。
この操作によって次回からは本画面は表示されません。
ログインプロンプト
DomainUのブートプロセスのメッセージが流れてテキストログインプロンプトが表示されます。
テキストログインプロンプトはそのまま放置しておいて構いません。
Domain0からのVNC接続
VNCクライアントのvncviewerを起動します。
接続先に「vine40share:1」を指定して＜接続＞ボタンで接続します。
※vine40shareはVine Linux 4のホスト名です。
GDMログイン画面
VNC接続できるとGDMログイン画面が表示されますので通常通りログインします。
デスクトップ操作
VNCクライアントからDomainU側のGUI操作が行えます(日本語入力も行えます)。

■ FC6パッケージの利用方式

[手順概要]：Vine Linux 4をDomainUで実行させる手順の流れ

Vine Linux 4をDomainUで実行させる手順(ステップ)の流れは次のようになります。

Vine Linux 4の通常インストール
ここではデスクトップ環境(GUI環境)も含めてフルインストールするものとします。
もちろんインストールの種類で「カスタム」を選択してデスクトップ環境を外してインストールしても構いません。
Vine Linux 4への仮想フレームバッファの導入
VNCクライアントからXDMCP接続してGUI操作できるように仮想フレームバッファを導入します。
※デスクトップ環境をもたないVine Linux 4についてはこのステップは不要となります。
Vine Linux 4へのFC6用Xenパッケージの導入
Xenカーネルの他に仮想デバイスを認識させるためのnash, kudzuパッケージ等もインストールします。
FC6パッケージを導入した仮想ディスクイメージをDomain0(FC6またはCentOS 5)側に格納します。
仮想ディスクイメージの中のファイル変更
仮想ディスクイメージの中の/boot/grub/menu.lst等の設定ファイルを変更します。
Vine Linux 4のDomainU実行用構成ファイルの準備
DomainUでのVine Linux 4の起動
VNCクライアントからVine Linux 4へのXDMCP接続
XサーバからVine Linux 4へのXDMCP接続

１．Vine Linux 4の通常インストール

ここではVine Linux 4のインストールCD-ROMからパッケージをほぼフルインストールします。
今回はVMware Workstation環境でVine Linux 4をインストールしました。

仮想ディスクファイルの実体はvine40ideshare-flat.vmdkというファイルで4GB固定サイズ(最初から4GB確保)のものです。

２．Vine Linux 4への仮想フレームバッファの導入

VNCクライアントから実ビデオカードを持たないDomainU(Vine Linux 4)にXDMCP接続してGUI操作できるように仮想フレームバッファを導入します。
その詳細手順は「仮想フレームバッファ(Vine Linux 4.0編)」を参照して下さい(手順変更は不要です)。

尚、デスクトップ環境をもたないVine Linux 4についてはこのステップは不要となります。

３．Vine Linux 4へのFC6用Xenパッケージの導入

Vine Linux 4に導入するFC6用Xenパッケージは便宜的に以下のように分類します。
FC6のインストールCD-ROM/DVDからパッケージをインストールします。

Xenカーネルパッケージ
(1)kernel-xen-2.6.18-1.2798.fc6.i686.rpm
このXenカーネルは以下のコマンドでインストールします。
# rpm -ivh --nodeps --force kernel-xen-2.6.18-1.2798.fc6.i686.rpm
尚、このkernel-xenのインストールではスクリプトの実行が失敗しinitrdが生成されず、かつカーネルモジュールも中途半端な状態となります。
これへの対応は後述します。
Xen仮想デバイス認識パッケージ
(1)nash-5.1.19-1.i386.rpm
(2)kudzu-1.2.57.1-2.i386.rpm
(3)hwdata-0.191-1.noarch.rpm
これらのパッケージは以下のコマンドで一括インストールします。
# rpm -Uvh --nodeps --force nash-5.1.19-1.i386.rpm kudzu-1.2.57.1-2.i386.rpm hwdata-0.191-1.noarch.rpm
Domain0用パッケージ
下記のパッケージの総称ですがglibc 2.4以上を必要とするのでglibc 2.3系のVine Linux 4では強制インストールしても利用できません。
※今回はVine Linux 4をDomainUとして動作させるためDomain0用パッケージのインストールは不要です。
(1)bridge-utils-1.1-2.i386.rpm
(2)SDL-1.2.10-6.2.i386.rpm
(3)xen-libs-3.0.3-0.1.rc3.i386.rpm
(4)libvirt-0.1.7-2.i386.rpm, libvirt-python-0.1.7-2.i386.rpm, python-virtinst-0.95.0-1.fc6.noarch.rpm, xen-3.0.3-0.1.rc3.i386.rpm
※これらの4ファイルは互いに相互依存関係があるためインストールする場合は１回のrpmコマンドで4ファイルを同時にインストールします。

４．FC6パッケージを導入した仮想ディスクイメージのDomain0側への格納

今回はVMware WorkstationのVine Linux 4の仮想ディスクファイル(vine40ideshare-flat.vmdk)をそのままDomain0側(FC6またはCentOS 5)にコピーします(FTP転送)。
そのコピー先は/root/vine40ideshare-flat.vmdkとします。

５．仮想ディスクイメージの中のファイル変更

この時点のVine Linux 4の仮想ディスクイメージは不完全な状態になっており、DomainU用FC6中の一部のファイルの取り込みが必要となります。
※事前にDomainU用FC6をインストールして仮想ディスクを準備しておきます(これが重要なポイントです)。

ここではFC6のVirtual Machine ManagerによってDomainU用のFC6が作成されているとします。
尚、このFC6(サイズ固定)の仮想ディスクファイル名はここではsys01U.imgとします。
※このDomainU用FC6は最小構成のもので構いません(デスクトップ環境は特に必要ありません)。

イメージファイルのマウント
# mkdir /mntfc6
# mkdir /mntvine40
# mount -o loop,offset=32256 sys01U.img /mntfc6
# mount -o loop,offset=32256 vine40ideshare-flat.vmdk /mntvine40
initrdのコピー
# cp -a /mntfc6/boot/initrd-2.6.18-1.2798.fc6xen.img /mntvine40/boot
カーネルモジュールのコピー
Vine Linux 4へのXenカーネルのインストールではカーネルモジュールのインストールが中途半端な状態になっています。
※例えば/lib/modules/2.6.18-1.2798.fc6xen/modules.dep等がインストールされていません。
そこでDomainU用FC6からカーネルモジュールを取り込みます。
# mv /mntvine40/lib/modules/2.6.18-1.2798.fc6xen /mntvine40/lib/modules/2.6.18-1.2798.fc6xen.old
# cp -Ra /mntfc6/lib/modules/2.6.18-1.2798.fc6xen /mntvine40/lib/modules

grub.confの準備
Vine Linux 4のgrub.confの実体はmenu.lstですので以下のように操作します。
# cp -a /mntvine40/boot/grub/menu.lst /mntvine40/boot/grub/menu.lst.old
# cp -a /mntfc6/boot/grub/grub.conf /mntvine40/boot/grub/menu.lst
更に/mntvine40/boot/grub/menu.lstの内容を以下のようにします。

default=0
timeout=5
#splashimage=(hd0,0)/boot/grub/splash.xpm.gz
hiddenmenu
title Vine4 domU (2.6.18-1.2798.fc6xen)
	root (hd0,0)
	kernel /boot/vmlinuz-2.6.18-1.2798.fc6xen ro root=LABEL=/
	initrd /boot/initrd-2.6.18-1.2798.fc6xen.img

DomainU用modprobe.confの準備
# cp -a /mntvine40/etc/modprobe.conf /mntvine40/etc/modprobe.conf.old
# cp -a /mntfc6/etc/modprobe.conf /mntvine40/etc/modprobe.conf
# cat /mntvine40/etc/modprobe.conf
alias eth0 xennet
alias scsi_hostadapter xenblk
仮想ハードウェア構成ファイルのコピー
# mv /mntvine40/etc/sysconfig/hwconf /mntvine40/etc/sysconfig/hwconf.old
# cp -a /mntfc6/etc/sysconfig/hwconf /mntvine40/etc/sysconfig/hwconf
ifcfg-eth0の変更
# vi /mntvine40/etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0
HWADDR行を削除します。
その他
# mv /mntvine40/lib/tls /mntvine40/lib/tls.disabled ※必須ではありません。
イメージファイルのアンマウント
# umount /mntfc6
# umount /mntvine40

６．Vine Linux 4のDomainU実行用構成ファイルの準備

Vine Linux 4のDomainU実行用構成ファイル(/etc/xen/xmvl4xdmcp)を以下の内容で作成します。
内容的にはFC6のVirtual Machine ManagerでDomainUのOSをインストールする際に自動生成される構成ファイルの流用です。

name = "Vine40U"
memory = "250"
disk = [ 'file:/root/vine40ideshare-flat.vmdk,hda,w', ]
vif = [ 'mac=00:16:3e:3c:f4:83, bridge=xenbr0', ]
vnc=1
vncunused=1
uuid = "9530a2c8-32dd-294b-de4b-3e4767b515c9"
bootloader="/usr/bin/pygrub"
vcpus=1
on_reboot   = 'restart'
on_crash    = 'restart'

７．DomainUでのVine Linux 4の起動

(1)DomainUでのVine Linux 4の起動は以下のコマンドで行います。
# xm create xmvl4xdmcp
※構成ファイルは/etc/xenから探索されます。

(2)FC6のVirtual Machine Manager(CentOS 5の場合は仮想マシンマネージャ)に「Vine40U」が表示されます。
そのVine40Uを開くと「Vine40U Virtual Machine Console」(仮想マシンコンソール)が表示されてブートプロセス中のメッセージを確認できます。
※実環境よりもブートに若干時間が掛かります。

(3)コンソールの左上のロゴはVine Linuxのロゴではなくペンギンロゴになります(FC6のXenカーネル使用のため)。

(4)仮想ハードウェア構成ファイル(hwconf)を上記で準備済みのためブート時にKudzuの画面は表示されません。

(5)下記の画像はCentOS 5の仮想マシンコンソールでのVine Linux 4のブートの様子です。

(6)テキストログインプロンプトが表示されたらログインしてみます(FC6上のVirtual Machine ConsoleでのVine Linux 4操作例)。
Virtual Machine Consoleで日本語が化ける場合は「export LANG=C」を指定して下さい。
尚、「=」記号はShiftキー + バックスラッシュ(日本語の「ろ」のキートップ)で入力できます。

(7)iptablesについては用途に合わせて設定変更するかサービスを停止させておきます(iptablesパッケージ自体をアンインストールするというケースもあります)。

(8)DomainUのVine Linux 4にssh接続して利用することも可能です。
仮想マシンコンソールでは入力できない記号文字もありますのでssh接続をお薦めします。

(9)ここで一旦Vine Linux 4を終了させてDomainUをdestroyします。

８．VNCクライアントからVine Linux 4へのXDMCP接続

再度DomainUのVine Linux 4を起動します。
# xm create xmvl4xdmcp

テキストログインプロンプトで停止
GUI操作するためVine Linux 4のコンソールはテキストログインプロンプトのままで結構です。
vncviewerでの接続
vncviewerを起動して「仮想マシンアドレス:1」で接続します。
GDM画面
下記はFC6上のVMware環境のCentOS 5のDomainUとしてVine Linux 4を起動してCentOS 5のvncviewerから接続した時の画面です。
GUIによるデスクトップ操作

９．XサーバからVine Linux 4へのXDMCP接続

Xサーバ(Cygwin/XやXming)からVine Linux 4へのXDMCP接続による操作は快適です。

Cygwin/Xの利用
Xmingの利用