PowerPC版Ubuntu 8.10のUSBメモリへの導入・利用


PowerPC版Ubuntu 8.10を含めたPowerPC版Linuxはその起動のためにyabootブートローダを必要とします。
このためPowerPC版Linuxはエミュレータ環境(QEMU, PearPC, GXemul等)で導入・実行するのは困難です。
だからと言ってPowerPC版Linuxは持ち運びができないと諦める必要はありません。
実は多くのPowerPC版LinuxはUSBメモリに導入することはできるのでちょっと工夫するだけで
そのUSBメモリにインストールしたPowerPC版Linuxを別のMacマシンで利用することができます。

ここではPowerPC版Ubuntu 8.10をUSBメモリに導入して利用する手順例を紹介します。
尚、USBメモリのPowerPC版Ubuntu 8.10環境ではSIMHを導入し、PDP-11エミュレータでのUnix v7を実行してみました。


1.マシン環境
PowerPC版Ubuntu 8.10をUSBメモリにインストールしたMacマシン環境は以下の通りです。



2.手順概略
PowerPC版Ubuntu 8.10のUSBメモリへの導入・利用の手順の流れ(概略)は以下の通りです。
(1)内蔵HDへのPowerPC版Linuxのダミーインストール
ここではUSBメモリにインストールするディストリビューションと同じPowerPC版Ubuntu 8.10をインストールします。
内蔵HDにダミーインストールしたPowerPC版Ubuntu 8.10をここでは便宜上「ダミーUbuntu」と呼びます。
(2)USBメモリへのPowerPC版Ubuntu 8.10のインストール
USBメモリにインストールしたPowerPC版Ubuntu 8.10をここでは便宜上「USBメモリUbuntu」と呼びます。
(3)ダミーUbuntuによるUSBメモリUbuntuの起動準備
(4)USBメモリUbuntuの起動
(5)USBメモリUbuntuの利用(Unix v7の実行)


3.内蔵HDへのPowerPC版Linuxのダミーインストール
内蔵HDへ以下の手順でPowerPC版Linuxをダミーインストールします。
(1)ubuntu-8.10-alternate-powerpc.isoをダウンロードしてインストールCD-ROMを作成します。
(2)そのインストールCD-ROMからブートしてインストールを進めます。
(3)CD-ROMドライブ検出エラー対策
PowerBook G4等、機種によってはインストール時のCD-ROMドライブ検出で次のエラーとなることがあります。
・「一般的なCD-ROMドライブは検出されませんでした。」(No common CD-ROM drive was detected.)
本エラー発生時は、インストールメインメニューに戻った時に[シェルの実行]を選択し以下のコマンドを実行します。
# modprobe ide-scsi
# exit ※メインメニューへの戻り。
メインメニューに復帰後、[CD-ROMの検出とマウント]から再実行します(CD-ROMが無事検出されます)。
(4)パーティション構成
約10MBの領域をNewWorldブートパーティションとして割り当てます。
パーティション構成例;
/dev/hda2:NewWorldブートパーティション
/dev/hda4:/パーティション
※swapパーティション:なし
(5)インストール後の再起動
マシンを再起動するとFirst Stage Ubuntu Bootstrap画面が表示されますので「l」を選択します。
次にWelcome to yaboot画面でのboot:プロンプトでEnterを押します。
これでダミーUbuntuがブートされます。
尚、マシン再起動後にFirst Stage Ubuntu Bootstrap画面が表示されない場合は以下のようにします。
Macマシンを起動して、起動音が鳴ったらすぐにcommand + option + O + FキーでOpen Firmwareに入ります。
Open Firmwareで「boot hd:2,yaboot」を実行するとWelcome to yaboot画面が表示されます。
Welcome to yaboot画面でのboot:プロンプトでEnterを押します。

またマシンによってはインストール後の再起動でXウィンドウが表示されないことがあります。
この場合はまずcontrol+option+F1でコンソール画面に切り替えてテキストログインします。
テキストログイン後、/etc/X11/xorg.confを手直しします(場合によっては新規作成)。


4.USBメモリへのPowerPC版Ubuntu 8.10のインストール
(1)使用するUSBメモリ
4GB容量のUSBメモリを使用します。
(2)USBメモリをセットした状態でインストールCD-ROMからブートしてインストールを進めます。
(3)CD-ROMドライブ検出エラー対策
これはダミーUbuntuインストールの場合と同じです。
(4)パーティション構成
USBメモリ中に約10MBの領域をNewWorldブートパーティションとして割り当てます。
パーティション構成例;
/dev/sda1:NewWorldブートパーティション
/dev/sda2:/パーティション
※swapパーティション:任意(今回作成せず)
(5)yabootブートローダのインストール先
yabootブートローダのインストール先の選択では内蔵HD側の/dev/hda2ではなくUSBメモリ側の/dev/sda1を選択します。
(6)インストール後のマシン再起動
この時点ではインストール後のマシン再起動でUSBメモリUbuntuを起動することはできません。


5.ダミーUbuntuによるUSBメモリUbuntuの起動準備
(1)yabootブートローダの変更
まずダミーUbuntuを起動します。
ダミーUbuntu側の/etc/yaboot.confの中にUSBメモリUbuntu側の/etc/yaboot.confの一部をコピーして編集します。
# mount /dev/sda2 /mnt
# cat /mnt/etc/yaboot.conf ※内容確認用
# umount /mnt
# vi /etc/yaboot.conf
以下の内容を追加します(USBメモリUbuntuのラベルは「usbLinux」としました)。
image=/pci@f2000000/usb@19/disk@1:2,/boot/vmlinux
    label=usbLinux
    root=/pci@f2000000/usb@19/disk@1:2
    append="root=/dev/sda2 ro quiet splash"
    initrd=/pci@f2000000/usb@19/disk@1:2,/boot/initrd.img
「usbLinux」用エントリ追加後の/etc/yaboot.conf

# ybin
このybin実行でyabootブートローダが更新されます。
(2)USBメモリUbuntuの/etc/X11/xorg.conf準備
PowerPCのマシンによってはインストール後の再起動でXウィンドウが表示されないことがあります。
そこでダミーUbuntu側の/etc/X11/xorg.confをUSBメモリUbuntu側にコピーします。
(Xサーバのドライバはマシン依存軽減のためfbdevを前提とします)
# mount /dev/sda2 /mnt
# cp /etc/X11/xorg.conf /mnt/etc/X11/xorg.conf
# umount /mnt


6.USBメモリUbuntuの起動
(1)マシンを再起動します。
(2)First Stage Ubuntu Bootstrapで「l」を選択します。
(3)Welcome to yaboot画面でのboot:プロンプトで「usbLinux」を指定してEnterを押します。
これでUSBメモリUbuntuがブートされます。
(4)GDMログイン
GDMログインします。
Xウィンドウが期待通りに表示されない場合はcontrol+option+F1でコンソール画面に切り替えてテキストログインします。
/etc/X11/xorg.confを手直ししてUSBメモリUbuntuを再起動します。
(5)パッケージの追加
リモートからの接続に備えてsshサーバをインストールします。
# sudo apt-get update
# sudo apt-get install openssh-server


7.USBメモリUbuntuの利用(Unix v7の実行)
(1)SIMHをインストールします。
# sudo apt-get install simh
(2)「SIMHのPDP-11エミュレーション環境でのUnix v7」で使用したUnix v7の仮想ディスク(Unix7th.disk)を取り込みます。
(3)Seventh Edition(PDP-11エミュレータ)の実行例(詳細は「SIMHのPDP-11エミュレーション環境でのUnix v7」参照)
PowerPC版Ubuntu 8.10では「att dz -am 4096」入力で「Sockets: bind error 98」エラーとなります。
そこでログイン用ポート番号として4096の代りに4097を使用します。
実行画面例;




8.別マシンでのUSBメモリUbuntuの起動
yabootブートローダが導入済みの別マシンでのUSBメモリUbuntuの起動方法は以下の手順となります。
ここではyabootブートローダが導入済みの別マシン(約80GB HDD)にはMac OS Xが無く
Vine Linux 4.2/ppcだけがインストールされているものとします。
(1)別マシンのLinuxを起動します。
(2)USBメモリUbuntuのUSBメモリをセットします。
(3)別マシンの/etc/yaboot.confの中にUSBメモリUbuntu側の/etc/yaboot.confの一部をコピーして編集します。
# mount /dev/sda2 /mnt
# cat /mnt/etc/yaboot.conf ※内容確認用
# umount /mnt
# vi /etc/yaboot.conf
以下の内容を追加します(USBメモリUbuntuのラベルは「usbLinux」としました。
image=/pci@f2000000/usb@19/disk@1:2,/boot/vmlinux
        label=usbLinux
        root=/pci@f2000000/usb@19/disk@1:2
        read-only
        initrd=/pci@f2000000/usb@19/disk@1:2,/boot/initrd.img
        append="root=/dev/sda2 quiet splash"
「usbLinux」用エントリ追加後の/etc/yaboot.conf

# ybin
このybin実行でyabootブートローダが更新されます。
(4)マシンをブートしてFirst Stage Bootstrapで「l」を選択します。
(5)Welcome to yaboot画面でのboot:プロンプトで「usbLinux」を指定してEnterを押します。
これでUSBメモリUbuntuがブートされます。
(6)GDMログイン
GDMログインします。
Xウィンドウが期待通りに表示されない場合はcontrol+option+F1でコンソール画面に切り替えてテキストログインします。
/etc/X11/xorg.confを手直ししてUSBメモリUbuntuを再起動しGUI操作できます(下記画面参照)。