Compiz Fusion(Ubuntu 8.04編)




2008年4月にUbuntu 8.04がリリースされました。
Ubuntu 8.04はデスクトップOSとしてWindowsへのインストールオプション、Firefox 3(Beta 5)搭載等非常に多くの機能拡張がなされています。
※その一方ではLiveUSBの作成機能が省かれたという面もあります。
Ubuntu 8.04ではCompiz Fusionという3Dデスクトップ環境が一層強化されました。
Compiz FusionというのはCompizウィンドウマネジャにCompizプラグインとEmeraldテーマを統合させたものです。
Ubuntu 8.04付属のCompiz Fusionのバージョンは0.7.4です(Fedora 8付属のものは0.6.0)。
下のサンプルキューブ画面のような幻想的な半透明キューブは目の保養になるかも知れません。


(キューブ部分の拡大図は後述)

下記はデスクトップキューブを更にキューブ化した画像です。



ここではCompiz Fusion環境を中心にUbuntu 8.04を紹介します。

尚、今回使用したVGAカードはnVIDIA GeForce 7600GTです。


  1. WindowsへのUbuntu 8.0のインストール
    Ubuntu 8.0にはWubi機能が新たに追加されました。
    Wubi機能とはWindowsファイルシステムに仮想ディスクを作成してそこにUbuntuをインストールしてWindowsとUbuntuのデュアルブートを実現する機能です。
    Wubiでいう仮想ディスクというのは仮想マシン用の仮想ディスクという意味ではありません。
    ここでの仮想ディスクはあくまでもWindows環境の中のファイルをUbuntuのインストールディスクと見なしているという意味です。
    (1)一つのWindows環境にインストールできるUbuntuは1個です。
    ※2個目のUbuntuをWubiでインストールしようとすると「Wubiは既にインストールされています」というエラーとなります。
    (2)WubiにおけるUbuntuのインストールはWindows上で行います(Wubiでのインストール設定例)。
    但し、Windows上では仮想ディスクの器の作成程度しか行われず、その後のUbuntuの最初の起動時に実インストールが行われます。
    (実インストール:パッケージのインストール、システム設定、言語パッケージのインストール、ハードウェア設定、GRUB設定等)
    (3)仮想ディスクサイズは最低でも6GBは必要となりますが、最大サイズは30GBという制限があります。
    指定したサイズ分の固定サイズのファイルが生成されます(実際にはswap用は別ファイルになりますが)。
    (4)WubiでUbuntuをインストールしてマシンをブートするとブートメニュー(WindowsとUbuntuの選択メニュー)が表示されます。
    実際にはC:\boot.iniに「c:\wubildr.mbr="Ubuntu"」という行が追加されています。
    「c:\wubildr.mbr="表示OS名"」の表示OS名部分は「Ubuntu」以外の値に変更しても構いません。



    (5)Windows側のドライブに仮想ディスクを作成してUbuntuをインストールするとUbuntuからWindows側ドライブを自動マウントしてアクセスできます。
    通常、Cドライブのマウント先は/media/diskになります(Cドライブにボリューム名があれば/media/ボリューム名がマウント先になります)。
    Cドライブ以外でUbuntuの仮想ディスクのあるボリュームについてもUbuntuからアクセスできます。
    今回は一つのHDD(500GB)が以下の構成になっています(DドライブはCD/DVDドライブ)。
    ・Cドライブ:基本パーティション(ボリューム名なし)
    ・Eドライブ:拡張パーティションの中の論理ボリューム(ボリューム名はbasedata)


    尚、Ubuntu側からそのCドライブ/Eドライブに対して日本語名のフォルダ/ファイルを作成することもできます。

    (6)仮想ディスクの増設手順;
    /homeは結構ディスク容量を圧迫するディレクトリです。
    そこで/homeだけを別の新規仮想ディスクに簡単に割り当て直す方法を紹介します(他にも方法はいくつかあります)。

    (7)WindowsファイルシステムへのLinuxインストールはRed Hat 6.2での「パーティションレスインストール」が最初のサポートだと記憶しています。
    しかし、Wubiの方がかなり使い勝手がいいように思います。
    またハードディスクだけは仮想ディスクですがそれ以外のデバイスはすべて実デバイスが使用できるのでネーティブ利用とほぼ同等です。
    大きなアップグレードをする場合はWindows側からその仮想ディスクをバックアップしておけばよいため安心です。

    (8)Windows環境にインストールしたUbuntu 8.04のアンインストール手順;
    まず、コントロールパネルの「プログラムの追加と削除」を開きます。
    次に、「Ubuntu」を選択して<削除>ボタンを押すと「Wubiアンインストール」画面が表示されます。
    その画面で<アンインストール>ボタンを押すと一瞬にしてアンインストールが終了します。
    <ダウンロードしたファイルをバックアップする(CD ISOファイル>オプションを有効にしておくとE:\ubuntu-backup\instalation.isoだけが残ります。

    WubiでのUbuntuアンインストールではC:\boot.iniの「c:\wubildr.mbr="表示OS名"」行も削除され、マシンをブートするとブートメニューの表示なしでWindows XPが自動起動します。

  2. Metacityでのウィンドウの影表示
    Ubuntu 8.04付属GNOMEのMetacityではそれ自体でウィンドウに影を表示させることができます。
    (1)影のないウィンドウ



    (2)影の設定
    まずgconf-editorを起動します。
    次にその設定エディタ画面の/apps/metacity/generalにある[compositing-manager]にチェックを入れます。
    その場でウィンドウの右と下に影が付きます。



  3. Compiz Fusion利用のためのNVIDIAカーネルドライバの組み込み
    まずNVIDIAカーネルドライバ導入前のxorg.confを/etc/X11/xorg.conf.orgとして保存しておきます(Xen環境で使用に備えて)。
    次に、[システム]−[システム管理]−[ハードウェアドライバ]メニューを選択します。
    <NVIDIAの高性能グラフィックドライバ(新しいカード向け)>を有効にするとそのドライバがインストールされます。
    /etc/X11/xorg.confは自動変更されます(自動変更後のxorg.conf例)。
    ドライバインストール後はリブートします。

  4. Compiz Fusion関連パッケージの導入
    Synapticパッケージマネジャでsimple-ccsm(Simple Compizconfig settings manager), fusion-icon, emeraldをインストールします。

  5. デスクトップ効果の有効化
    [システム]メニューの[設定]-[外観の設定]を選択して、「外観の設定」画面の「視覚効果」タブを表示します。
    この時点でのデフォルトは<通常効果>になっていますが<効果なし>にすると透明効果が全く得られません。
    <通常効果>での時計表示例
    <効果なし>での時計表示例

    本題に戻りますが、ここでの「視覚効果」タブでは<設定変更>を選択します。
    <設定>ボタンで「簡易版 Compiz Config 設定マネージャ」画面が表示されますが特に設定変更する必要はありません。

  6. Emeraldの利用
    Emeraldはウィンドウ装飾を行うソフトウェアで豊富なテーマが利用できます。
    Emeraldのテーマはhttp://www.beryl-themes.org/等からダウンロードして自分で組み込む必要があります。
    今回はWinXPというテーマを主に使用してみました。

    WinXPテーマ例(Ubuntu側からWindowsのCドライブをアクセスしている様子です)
    UbunVistaテーマ例

  7. デスクトップ効果の詳細設定
    [システム]−[設定]−[Advanced Desktop Effects Settings]メニューでCCSM(CompizConfig Settings Manager)を起動して詳細設定が行えます。
    デスクトップキューブでのウィンドウ表示オプションは「エフェクト」の[3D ウィンドウ](3D Windows Plugin)側にあります。
    (デスクトップとウィンドウとの距離やウィンドウの厚さ設定等)

  8. デスクトップキューブについて
    デスクトップの右下にあるワークスペースアイコンの設定でワークスペースの行を2から4に変更することでキューブ表示が可能となります。
    (Ctrl+Alt+マウス左ボタンでデスクトップのキューブ表示ができるようになります)
    単純なデスクトップキューブ例

    尚、行が3の場合は三角柱の立体デスクトップになります。

  9. ターミナルサーバクライアント
    Ubuntuにはターミナルサーバクライアント(tsclient)が付属しています。
    これを利用してWindows XPにRDP接続できます(リモートデスクトップの中でUbuntu側ファイルシステムを参照することも可能)。

    尚、ターミナルサーバクライアントは[アプリケーション]−[インターネット]メニューの中にあります。

  10. ソフトウェアの追加と利用
    今回はWine, CrossOver Linux, VMware Serverをインストールしてみました。

    VMware ServerでのVine Linux 4.2デスクトップ
    VMware ServerでのWindows XPインストール
    (VMware Server上のWindows XPにUbuntuをインストールしている様子はこちらです)

  11. VMware VirtualCenter for VMware ServerからのVMware Server接続
    Ubuntu 8.04にインストールしたVMware Serverに対してはVMware VirtualCenter for VMware Serverから接続利用することもできます。
    Ubuntuとは別マシンへのVMware VirtualCenter for VMware Server自体のインストール手順紹介は省略しますが、
    VMware VirtualCenterでVMware Server接続するためには「VMware VirtualCenter Agent for VMware Server」というライセンスを
    VMware VirtualCenter側に登録しておく必要があります。

    VMware VirtualCenter for VMware ServerからのVMware Server接続例
    VMware VirtualCenter for VMware ServerからVMware Server上のUbuntu操作の様子

  12. Windows環境にインストールしたUbuntuからのCドライブファイル利用
    (1)Cドライブに入っている画像ファイルをそのままUbuntuの壁紙として利用できます。
    背景の変更で<追加>ボタンを押して/media/disk/WINDOWS/Web/Wallpaper/草原.bmpを壁紙として登録利用してみました。
    (2)同様にCrossOver LinuxでのWord 2000でもその草原.bmpを直接取り込めます

  13. サンプルキューブ画面の補足説明
    下記は先頭画像のキューブ部分の原寸図です。


    [補足事項(CCSMでの主な設定内容)]
    (1)デスクトップカテゴリのキューブ回転(Rotate Cube)のズーム値はほぼ0にしています(デフォルトは0で最大値は2)。

    (2)デスクトップカテゴリのDesktop Cubeの回転キューブの不透明度は48にしています。
    尚、キューブ化していないデスクトップの不透明度は100にしています。

    (3)キューブの上面画像はCompiz Fusionロゴを使用させて戴きました。
    ※Compiz Fusionロゴの所在:http://ja.wikipedia.org/wiki/Compiz_Fusion

    (4)キューブの底面画像はhttp://compiz-themes.orgのCubecapsにあるNvidia Blackという画像を使用させて戴きました。
    ※Nvidia Blackの所在:http://compiz-themes.org/content/show.php/Nvidia+Black?content=71776

    (5)キューブのSkydoom画像はhttp://compiz-themes.orgのWallpapersにある「Green explosion」という壁紙を使用させて戴きました。
    ※Green explosion壁紙の所在:http://compiz-themes.org/content/show.php/Green+Swirl?content=68197
    このSkydoom画像についてはアニメーション化するオプションを指定して、より一層幻想的イメージにしています。

    (6)エフェクトカテゴリのキューブの反射での反射モードは「飛び跳ね」を指定しています。

  14. Compiz Fusionのアップグレード
    Compiz Fusionのバージョンを0.7.4から0.7.6にアップグレードしてみました。


  15. リモートCompiz Fusion操作
    ここではEee PC 901上のeeeUbuntu 8.04のLiveUSBからデスクトップマシンのUbuntu 8.04にVNC接続してリモートでCompiz Fusion操作する例を紹介します。
    尚、LAN配線の都合上Eee PC 901側は有線LANではなく無線LANの利用としています。
    (Eee PC 901上のeeeUbuntu 8.04のLiveUSBでもローミングによる無線LAN接続ができます:Eee PC 901のeeeUbuntu 8.04のモバイル利用例)


  16. Eee PC 901におけるeeeUbuntu 8.04用LiveUSBでのCompiz Fusion利用
    LiveUSBをEee PC 901にセットしてマシンの電源を入れます。
    ESCキーを押したままでいるとどのドライブからブートするかのメニューが表示されますのでUSB Flash Diskを選択してブートします。
    Ubuntu 8.04付属のXGL対応のXserverが導入されていることを確認して以下のコマンドを実行します。
    $ sudo apt-get update
    $ sudo apt-get install simple-ccsm fusion-icon emerald
    「外観の設定」画面で視覚効果を有効にし、かつCCSMで効果をカスタマイズします。
    下記はeeeUbuntu 8.04用LiveUSB環境でのデスクトップキューブ例です。



  17. Intel MacでのUbuntu 8.04
    Intel Mac環境でもUbuntu 8.04のCompiz Fusionを体験できます。


  18. VirtualBox 1.6.4
    ドイツのInnoTek社が開発していたVirtualBoxはバージョン1.6からSun xVMという従来のブランドの一つとして「Sun xVM VirtualBox」となりました。
    VirtualBoxはその1.5でWindowsゲストに対するシームレスモードをサポートしました(2007年9月リリース版)。
    しかし2008年5月リリースのVirtualBox 1.6ではLinux/Solarisゲストについてもシームレスモードがサポートされました。
    ここではCompiz Fusion環境でのシームレスモード利用について簡単に紹介します。


  19. VirtualBox 2.0.2環境でのCompiz Fusion利用
    2008年9月12日にVirtualBox 2.0.2がリリースされました。
    VirtualBox 2.0.2は64ビット版ゲストOSをサポートしたVirtualBox 2.0.0の不具合対策版です。
    Ubuntu 8.04.1 LTS 日本語ローカライズドDesktop CDを用いてVirtualBox 2.0.2にUbuntuをインストールしてみました。
    従来からVirtualBoxにインストールしたUbuntuでCompiz Fusionが使用できますがやはりその重さはVirtualBox 2.0.2になっても変わりません。
    ※VirtualBox 2.0.2環境でのUbuntuにはメモリ512MB, ビデオメモリ64MBを割り当てました。
    Guest Additionsインストール&リブート後に「apt-get install xserver-xgl」を実行して再ログインするとまずウィンドウに影が付きます。
    あとはCompiz Fusion関係のパッケージのインストール(アップグレードも可)をしてデスクトップ効果をカスタマイズします。
    デスクトップキューブを回転させようとするとCPU利用率が90〜100%になります。



    ・この時点の/etc/X11/xorg.confはこちらです。

    下記はVMware Server 2.0上のUbuntu 8.04.1とVirtualBox 2.0.2上のUbuntu 8.04.1を同時実行した様子です(ホストもUbuntu 8.04.1)。
    ※VMware Server 2.0上のUbuntu 8.04.1ではxserver-xglをインストールしてもデスクトップ効果は得られません。