Intel Macのトリプルブート環境




Intel MacにBoot Campを導入するとMac OS XとWindowsのデュアルブート環境を容易に構築できます。
次にrEFItを導入するとデュアルブート環境をトリプルブート環境に拡張してLinux等もインストール/実行できるようになります。
現時点でHDDにインストールされたMac OS X, Windows, Linuxを安全にトリプルブートできるコンピュータはIntel Macしかありません。

尚、ここでのトリプルブート環境とはIntel Macの内蔵HDDにMac OS X, Windows, LinuxをインストールしてrEFItブートメニューから起動OSを選択できる環境を指します。
※ここではUSBデバイスからブートできないファームウェアを前提に各OSをIntel Macの内蔵HDDにインストールします。
※Windowsの場合は元々USBやIEEE1394のポートに接続されたディスクへのインストールはできないという制限があります。

更に、トリプルブート環境のGRUBブートローダを使用することで4番目のOS, 5番目のOS等も追加インストールして利用できます。
今回のトリプル環境でのWindowsはWindows Vista(32ビット版)を使用し、LinuxについてはFedora 7(32ビット版)を使用しています。
※Fedora 7の選択理由は後述のGPT/MBRのハイブリッドに対応したGRUBブートローダを実現しているためです。
またFedora 7(32ビット版)のGRUBからブートして利用する4番目のOSはFedora 7(64ビット版)とし、5番目のOSはCentOS 5(32ビット版)としました。
最後はUSBメモリにDebian GNU/Linux 4.0をインストールして実行してみます。

今回使用したBoot Campは2007年8月8日にリリースされたBoot Camp Public Beta 1.4(期間限定版)です。
rEFIt(ver 0.10)についてはトリプルブート環境構築の試行ということでUSBメモリに導入しました。



1.マシン環境




2.トリプルブート環境構築手順の流れ

トリプルブート環境を構築する手順の流れは以下の通りです。




3.Boot Campの導入

Apple社のサイトからBoot Camp Public Beta 1.4(BootCamp1.4.dmg)をダウンロードしてマウントします。
マウントして表示されるBoot Camp Assistantフォルダ中のInstall Boot Camp Assistant.mpkgをインストールします。
このインストールでアプリケーションフォルダの「ユーティリティ」中に「Boot Camp アシスタント」が作成されますが、
トリプルブート環境構築ではこの「Boot Camp アシスタント」のMac Windows Driversディスク作成機能だけを使用します。



4.Mac Windows Driversディスクの作成

Boot Camp アシスタントを起動し、画面のガイドに従ってMac Windows Driversディスク(CD-R)を作成します。
このMac Windows Driversディスクにはディスプレイドライバやサウンドドライバ等が格納されます。
※このMac Windows DriversディスクはWindows XP SP2またはWindows Vista専用でありWindows XP SP1環境では利用できません。

尚、Boot Camp アシスタントを起動してそのウィザードを使用しなくてもMac Windows Driversディスク(CD-R)は作成できます。
具体的にはまず「Boot Camp アシスタント」の右クリックメニューから<パッケージの内容を表示>を実行します。
次にそのContentsフォルダのResourcesフォルダにあるDiskImage.dmgをディスクユーティリティの「ディスクを作成」でCD-Rに書き込みます。
それによって「Mac Drivers」というボリュームのCD-Rが出来上がります。



5.USBメモリへのrEFItの導入




6.Mac OS X内蔵HDDへの2パーティション追加

Mac OS X内蔵HDDにWindowsとLinuxをインストールするためのパーティション(ボリューム)を用意します。

Boot CampアシスタントではWindows用パーティション(Boot Campパーティション)1個しか作成できないため、
diskutilのオンラインリサイズ機能(resizeVolume)を使用して既存パーティションサイズを縮小させて2個のパーティションを追加します。
尚、ここで作成するボリュームは以下の通りとします。
(1)Macintosh HDボリューム:50GBに減らします。
(2)Linux用ボリューム:6GB
(3)Windows用ボリューム:18GB
※Boot CampパーティションとなるWindows用ボリュームは必ず最後のボリュームとなるようにします(今回はdisk0s4)。

diskutil resizeVolumeは以下のように指定して実行します。

$ diskutil resizeVolume disk0s2 50G "Linux" "MacLinux" 6G "MS-DOS FAT32" "MacWindows" 18G
※ボリューム名は後で使用しませんので暫定的な名称で構いません。
【コマンドの実行表示】
Started resizing on disk disk0s2 Macintosh HD
Verifying
Resizing Volume
Adjusting Partitions

Finished resizing on disk disk0s2 Macintosh HD
You will need to manually reformat your new partitions.
WARNING: You must now reboot!

Mac OS Xを再起動します。

再起動後にパーティション構成を確認します。

$ diskutil list /dev/disk0
【コマンドの実行表示】
※下記表示からは分かりにくいですが実はdisk0s2とdisk0s3の間に128MBの未割り当て領域が存在します。
(「sudo gpt -r show /dev/disk0」のコマンドならそれが確認できます)

/dev/disk0
   #:                   type name               size      identifier
   0:  GUID_partition_scheme                    *74.5 GB  disk0
   1:                    EFI                    200.0 MB  disk0s1
   2:              Apple_HFS Macintosh HD       50.0 GB   disk0s2
   3:   Microsoft Basic Data                    6.0 GB    disk0s3
   4:   Microsoft Basic Data                    18.2 GB   disk0s4

尚、Boot Campアシスタント以外でパーティションを追加した後はBoot Campアシスタントを利用できなくなります。
Boot Campアシスタントを起動すると次のようなメッセージダイアログが表示されます。






7.Windows Vistaのインストール

Windows VistaのインストールDVDをドライブにセットし、Cキーを押しながら電源投入します。
これによってWindows Vistaのインストーラが起動されます。

Windows Vistaのインストールは、言語設定後に<今すぐインストール>をクリックして進めます。
ここでの注意点はWindows Vistaのインストール中にパーティション変更操作(パーティションの削除・追加等)を行わないということです。
パーティション変更操作を実施してもWindows Vistaをインストールして実行することはできますがMac OS Xの「起動ディスク」画面に「Windows(Untitled)」というボリュームが表示されなくなります。
更に、VMware FusionにおいてそのWindows用パーティション(Boot Campパーティション)からのゲストOSブートができなくなります。

このような制約があるためWindows Vistaのインストール先はデフォルト表示される「ディスク0 パーティション 4」のままとする必要があります。

またWindows VistaのインストールはBoot Campからの起動としていないためインストール中の再起動はOptionキーを押してWindowsディスクを選択してブートします。

Windows Vistaをインストールした環境では以下のようになります(この時点ではまだデュアルブート環境)。
(1)内蔵Ethernet(有線)でのネットワーク利用は可能です。
(2)AirMacについてはWindows Vista標準の「ワイヤレスネットワークの管理」からWEP等の設定をして利用可能となります。
(3)サウンド再生はできません(Windows Vistaには対応するサウンドドライバが無いようです)。
(4)ディスプレイアダプタは「Mobile Intel 945GM Express Chipset Controller 0」用ドライバが自動インストールされ1600x1200の解像度でもAero対応となります。



(5)Mac OS X側の起動ディスクには「Windows(Untitled)」が追加されます。
(6)Mac OS X側のディスクユーティリティにもUntitledボリュームのマウント先やフォーマット(Windows NT ファイルシステム)が表示されます。
(7)MacキーボードとPCキーボードについて:




8.Windows VistaへのMac Windows Driversの導入(目的:サウンド再生他)

事前に作成しておいたMac Windows Driversディスク(CD-R)をセットし、setup.exeを起動してMacマシンに対応したドライバをインストールします(ドライバ選択はできません)。
このMac Windows Driversの導入結果は以下のようになります。
(1)内蔵Ethernet(有線)でのネットワークは利用可能のままです。
(2)AirMacでのネットワークも利用可能のままです。
(3)サウンド再生ができるようになります(SigmaTel High Definition Audio CODECがインストールされるため)。
※SigmaTel Audioサービスが自動起動されるようになります。
(4)ディスプレイアダプタは「Mobile Intel 945 Express Chipset Family」対応ドライバが自動インストールされ1600x1200の解像度ではAero対応でなくなります。
尚、解像度を1280x1024等にすればAero対応となります。
(5)コントロールパネルに「Boot Camp」が追加され起動ディスクの変更ができるようになります。
※タスクバーのシステムトレイの「Boot Camp」アイコンの右クリックメニューに<Mac OS Xで再起動>もあります。
(6)上記のようにBoot Camp経由でないWindows Vistaのインストール後のデフォルト起動OSはMac OS Xのままです。
※単に電源ボタンを押すとMac OS Xが起動します。
(7)Boot Campヘルプ(C:\Program Files\Boot Camp\Boot Camp.Resources\ja.lproj\Boot Camp Help.chm)がインストールされます。
※そのヘルプにはPCキーボードとAppleキーボードの対応表(Alt+PrintScreen = Option + F14, Windows = コマンドキー等)も記載されています。
(8)キーボードでの( ) \ | _ 等の記号入力は問題なく行えます。
もしそれらの記号入力ができなくなった場合はキーボードのドライバの更新をオンラインでのソフトウェア検索モードで実施します。
(9)Macキーボードの場合、「カナかな」キーでIME言語バーに「あ」が表示されます(Shift+「英数」キーで「A」表示)。
(10)PCキーボードの利用について
外部PCキーボードの場合は、Alt+「半角/全角」キーで「あ」と「A」が切り替わります。
(「カタカナひらがな」キーで「あ」が表示され、「英数」キーだけで「A」表示ともなります)
VMware Fusion上のBoot Camp partition(Windows)では「半角/全角」キーだけで切り替えできます。
※LinuxのAnthy+uim利用時はデフォルトで「半角/全角」キーだけで切り替えできます。
Intel MacでWindowsを実行させる場合、Macキーボードを使用するかPCキーボードを使用するかは単に慣れの問題かと思われます。
(11)Bluetooth対応マウスがWindows Vistaでも利用できるようになります。
具体的にはコントロールパネルに追加されたBluetoothデバイスを開き<追加>ボタンで「Bluetoothデバイスの追加ウィザード」を開始します。
AppleのMighty Mouseが認識されるとドライバが自動インストールされてMighty Mouseも使用可能となります。






9.Windows VistaへのMacディスク読み書きツールの導入(任意)

Windows VistaにMac Windows DriversをインストールしてもWindows VistaからMacディスクのアクセスはできません。
そこで必要に応じてWindows VistaにMacディスクの読み書きツールを導入すると便利です。




10.Fedora 7のインストール

Fedora 7のインストールDVDをドライブにセットし、Cキーを押しながら電源投入します(Macboot USBはこの時点ではセット不要です)。
これによってFedora 7のインストーラが起動されます。

Fedora 7のインストール方法はネーティブ環境の場合と同じですが、今回のトリプルブート環境構築では/dev/sda3をインストール先として指定します(swapパーティションは無しです)。
またGRUBブートローダはデフォルトの/dev/sda3にインストールします(MBRへのインストールオプションは表示されません)。
Xen(仮想化)をインストールして利用することもできます。

Fedora 7のインストールで注意が必要なのはFedora 7のインストール中の再起動の対処方法です。
Fedora 7のインストール中に再起動する場合はMacboot USBをセットし、Macマシンの起動音が鳴った時にOptionキーを押します。
その場合、画面左からMacintosh HD, Windows, rEFItの順にディスクアイコンが表示されます。
まず、rEFItのディスクアイコンを選択してEnterキーを押し、次のブートメニューでペンギンアイコンを選択してEnterキーで起動します。
※rEFItのブートメニューは利用者が設定するのではなくrEFItが起動時に自動作成します。

Fedora 7をインストールした環境では以下のようになります。
(1)内蔵Ethernet(有線)でのネットワーク利用は可能です。
※内蔵Ethernet(有線)のドライバはMarvell Yukon 88E8053対応sky2ドライバが使用されます。
(2)サウンド再生はできません(Fedora 7には対応するサウンドドライバが無いようです)。
(4)ビデオカードは「Intel Corporation Mobile 945GM/GMS, 943/940GML Express integrated Graphics Controller」として認識されます。
Xウィンドウ用のドライバは「intel」が使用されます。
※この標準のディスプレイドライバでCompizを使用したデスクトップ効果を適用することが可能です。

Fedora 7のGRUBメニューにWindows Vista起動用の項目を追加すればGRUBメニューからVistaを選択して起動できるようになります。
具体的にはFedora 7のGRUB設定ファイル(/boot/grub/grub.conf)に以下の記述を追加します。

title Vista
	rootnoverify (hd0,3)
	chainloader +1

最後にGPTとMBRの両方に対応したGParted(GUIベースのパーティション管理ツール)をインストールします。
※GPartedはトリプルブート環境構築/維持での必需品的存在です。
# yum install gparted



11.Windows Vistaの修復

Fedora 7をインストールするとWindows Vistaの起動ができなくなります。

[Windows Vistaの起動エラー画面]



これはWindows Vistaのブートローダが\Windows\system32\winload.exeを見つけられなくなるためです。
rEFItのブートメニューで[Start Partioning Tool](実体はgptsync.efiユーティリティ)を選択してMBRをGPTに同期させてもWindows Vistaの起動はできません。
※[Start Partioning Tool]を実行するとWindows Vistaをインストールした/dev/sda4のタイプも「Linux」と表示されますがそれを「NTFS/HPFS」となるように同期させてもNGです。
(rEFIt Shellを起動してgptsyncを実行しても同様)

以下の手順でWindows Vistaの修復を行います。




12.トリプルブート確認

Macboot USBをセットして以下の手順でトリプルブートができることを確認します。
尚、CD/DVDは何もセットしません。




13.トリプルブート環境での各OSの利用




14.トリプルブート環境への4番目OS, 5番目OSの追加利用

トリプルブート環境には4番目のOS, 5番目のOS等も追加インストールして利用することもできます。
※4番目のOS, 5番目のOSをインストールしてブートする環境はもはやトリプル(3多重)ではなく普通の「マルチブート環境」です。
このマルチブート環境を実現する方法はいくつかありますがここではLinuxを介在させる方法を紹介します。
具体的にはその4番目のOS, 5番目のOSをブートするブートローダとして、上述したFedora 7のGRUBブートローダを使用します。




15.USBメモリへのDebian GNU/Linux 4.0のインストールと実行

ここでは4GBのUSBメモリに32ビット版Debian GNU/Linux 4.0(Debian 4.0)をインストールし、
Fedora 7のGRUBメニューからそのDebian 4.0を起動できる設定をする方法を紹介します。
USBメモリを使用するという点以外は4番目OS, 5番目OSの追加の場合と基本的に同様ですが、
デバイス名の変更やWindows Vistaの修復作業等は不要となります。



16.USBメモリへのFedora 8 Test 2のインストールと実行

GPTを導入したUSBメモリへのFedora 8 Test 2のインストールと実行手順は「Intel MacでのFedora 8 Test 2環境」で紹介しています。



17.Windows Vistaの安全な再インストール

Windows Vistaインストール後のFedora 7のGRUBブートローダは/dev/sda3(disk0s3)にインストールしています。
このためWindows Vistaを「ディスク0 パーティション 4」に再インストールしてもFedora 7のGRUBブートローダには影響がありません。
即ち、Windows Vistaの「ディスク0 パーティション 4」への再インストールは何回でも安全に行うことができるということになります。
※Windows Vistaの「ディスク0 パーティション 4」への再インストールによるGPT/MBRの実質的変化はありません。



18.Mac OS XからのBoot Camp Vistaへのファイル書き込み

Mac OS XからBoot Camp Vista(Windows VistaをインストールしたNTFS形式のBoot Campパーティション)をマウントしてファイルアクセスできます。
しかしデフォルトでは読み込み専用モードとなります。
Mac OS XからBoot Camp Vistaにファイル書き込みをするには最低限MacFUSEとNTFS-3Gのインストールが必要です。
今回はMacFUSE-Core-0.4.0.dmgとNTFS-3G_1.1004-u2-catacombae.dmgをダウンロードしてインストールしました。

Mac OS XからBoot Camp Vistaを次のようにマウントします。
$ pwd
$ mkdir bcvista
$ sudo /usr/local/bin/ntfs-3g /dev/disk0s4 /Users/ユーザ名/bcvista/ -o force
この操作によってデスクトップに「MacFUSE Volume 1」というボリュームが表示されます。
あとはそのボリュームにフォルダ作成やファイル書き込みが可能となります。




19.Mac OS X v10.3(Panther)の同時使用

Mac OS X v10.4(Tiger)ではいろいろな仮想マシンを操作できますが今のところMac OS Xを仮想化することはできません。
しかし単にInetl MacからPowerPCのMac OS X(例:Panther)を操作したいという場合もあるかも知れません。
そのような場合はVNCを利用します。
PowerPCのMac OS X(Panther)側にフリーのVNCサーバ(Vine Server for OS X[旧OSXvnc])を導入し、Intel Mac側のVNCクライアントから接続します。
※Windows等のVNCクライアントからも接続できます。